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昔作っていたゲーム『ピノキオにはなれない』についての話


これは、僕が17~20頃の頃に考えていたゲームのプロットです。当時は同人ゲームサークルにいたので。
しかしそのサークルも解散してしまい、世にでること無くこのままこのプロットが沈むのは悲しいので、自己満足

のためにここで公開します。本編は最後の方に載ってます。
願わくば、誰かの目に止まりますように。

《おおよその世界観》

架空の街 架空の世界 架空の年号
平代25年 2013年

おおよその見た目や空気は現代と変わらない。
ただ、一つ違うのは『過去に魔法というものが存在した事』
しかし、それはもう忘れ去られている。
なぜなら、科学が魔法でできる事に近づいてきたから。
しかし、それでも魔法には及ばない事もある。
それは、『人の手で命を作り出す事』

舞台は架空の町 湖城県 大宮市 
主人公は大宮市の県立高校に通う二年生。
湖城県立大宮高等学校
三年制の高校で普通科のみ。
クラス数は1学年 4クラスと少なめ。
近くには私立の高校があるのが理由。
学力はそこまで高くない。
学費もそこそこ。

礼子さんの骨董店 
「アンティークショップ レイコ」
本人曰く、無難なほうがわかりやすいでしょ?

《詳しい設定、舞台背景等》

【舞台背景】

『魔法』というものが存在していたが、人類の技術が魔法で出来ることを補えはじめたので魔法を信じる人間が少

なくなり、『魔法』は廃れて消えていった世界。魔法が存在したということすら忘れられている。
主人公たちの住んでいる世界は実際のものとなんら変わりは無い。
昔に魔法があった、存在した。ただそれだけが実際とちがう世界。
『魔法』を行う方法が書かれた『魔法書』というものが存在している。そして、。それは主人公『沖崎友也』の父

親の書斎にある。
主人公の住む町はありふれた地方都市。駅前だけが発展していたり、そのくせ裕福な家がちらほらいたりする。主

人公の家もそのうちの一つ。
駅前には娯楽として『水族館』『映画館』『商店街』『ゲームセンター』等が充実しており、若者が遊ぶには十分

である。
駅からはバスが出ており、主人公が通う『湖城県立大宮高等学校』にも直接出ている。
駅と学校の間に主人公の家が建っており、学校と駅までどちらとも自転車で15分ほど。
学校の付近はほとんど住宅街で囲まれている。
その中に『森宮骨董店』がポツンと建っている。通学路よりすこし外れたところに建っている為、学生は寄らない


学生以外もあまり寄らない。
主人公の家とは自転車で十分ほどの場所。しかし、存在感の薄い店のため主人公は最近までその存在を知らなかっ

た。
通学路は、日中は人通りが多く安全な場所だが、夜になるとほとんど通る人がいなくなる上に、街頭が少ないせい

で安全性が懸念されている。
物陰や、ちょっとした小道が多いためそこに隠れたりすることが出来る。

【魔法】
『魔力陣』によって体内に魔力を常駐させることで使えるようになる。一度体内に魔力を常駐させてしまえば『魔

力陣』を使う必要はなくなる。

『魔法』のレベルによって『魔法陣』を使うかどうか分かれる。『魔法陣』は『魔力陣』とは違い、『魔法』を使

う際に必要な陣である。
物を動かしたりする程度なら『魔方陣』は必要ないが、火、水、木、金、土を操るならば『魔法陣』が必要になる

。攻撃魔法として使う場合ならば手の甲ほどの大きさの陣で十分である。
一度書いたならば、消さない限り効力は続く。
命を扱ったり、使い魔を召還するようなレベルになると『魔法陣』の大きさもそれに比例する。(例)命を与える

ならば対象物より一回り大きい魔法陣。
命を与えたりするような魔法は大昔より禁忌とされており、一般的には使われることはなかった。
そのため、使われていたレベルの魔法は『火を操る』『水を発生させる』等のみ。
しかし、とある魔法使いの『フレン・マカヴェル(後述)』がその禁忌に踏み込み『人形に命を与える魔法』を完

成させる。しかし、その頃には魔法は廃れており誰にも信じてもらえず闇に消えていく。
『自然的魔法』――人間が努力すれば出来ることを楽に行う。
『禁忌魔法』――人間には到底不可能なことを行う。
こういう風に分けられている。
魔法が完全に廃れきった頃、一人の学者『ロイツ・マクラーニ(後述)が魔法について調べ、『自然的魔法』と『

禁忌魔法』の行い方などを詳しくまとめた本『魔法書』を書き上げている。

【魔法書】
ロイツ・マクラーニが書き上げた一冊のみの本。それまで世界中に散り散りになっていた魔法の術式をまとめてい

る。
彼の死後その本はどこかに消えてどこにあるかわからなくなっている。
しかし、上崎遠也の父親がオカルトマニアで、偶然その本を手に入れ自分の書斎に置いている。

【魔力陣】
魔法を使う際に体内に魔力を常駐させるために必要な陣。一度体内に常駐させれば魔力は枯れきるまで存在し続け

る。

【魔法陣】
魔法を使う際に必要な陣。火、水、木、金、土を操る場合にのみ必要。物を動かすなどというときには必要ない。
一度書くと、消えるまで効力は続く。

【自然的魔法】
火、水、木、金、土を操る。物を動かす。そういった魔法の総称。人間が努力すれば出来ることを楽に行う。

【禁忌魔法】
命を与える。存在しない生命体をつくりだす。そういった、禁忌とされてきた魔法の総称。人間には到底不可能な

ことを行う。

【湖城県立大宮高等学校】
三年制の高校で普通科のみ。
クラス数は1学年 4クラスと少なめ。
隣の市には私立の高校があるのが理由。
学力はそこまで高くない。
学費もそこそこ。
隣の市にある私立高校のほうが学力は上。そこに受からなかった生徒がこの学校に来ることが多い。
主人公の家とは15分ほどの距離。
部活動が充実しているが、どれも成績は並。
ほんとに、すべてにおいて並の学校だが、購買の焼きそばパンはなぜか非常においしく作られており、昼前の授業

を抜け出しても買えないと噂されるほど人気。
一般的に不良と言われるような生徒がちらほら存在している。おちこぼれですね、はい。

【森宮骨董店】
森宮礼子(後述)が経営している骨董店。礼子が父親から引き継いだ店である。礼子自身も骨董品集めが好きであ

るが、それらを売りさばいて生活費にしている。
だが、店内にある等身大の球体間接人形(以下、人形)は決して誰にも売らない。
店自体は毎日空いているのだが、宣伝行為や呼び込み等をしないため、あまり誰も近寄らない。
入り口のドアをいつも閉めているせいで、閉店していると周りには思われている。
やってくるお客さんは大抵同じ人。

【人形に命を与える魔法】
禁忌魔法のうちの一つ。魔法陣を描きその中心に人形を置き、人形の体のどこかに同じ魔方陣を小さく描く。
術者の魔力を人形の体内に満ちさせ、それを原動力として動く。
魔法陣そのものにも力があり、この魔方陣のおかげで人形に自我や感情というものが発生する。
これを書き間違えると人形の感情や自我に何らかの異常をきたす。

【連続通り魔殺人事件】
自分が人間ではないから遠也が会いに来てくれなくなったと勘違いし、人間になろうと考えたフレンが起こした事

件。
禁忌魔法である【人形を人間にする魔法】を行うために、無差別に人を襲って臓物を集め始める。
しかし、遠也の魔力が体内にあるだけで、自分自身の魔力を持たないフレンには行うことの出来ない魔法。
そもそも、人形は自分自身が人間になれるとは思わないもの。フレンがこう思い始めた原因は遠也が魔法陣を書き

間違えたため。
そのため、人形でも人間になれる、自分が人間じゃないのがすべて悪いなどと思うようになった。
骨董店を出て、町のはずれの小屋でき活動しはじめる。
フレンが犯人だと知った遠也は、フレンを人形に戻すことしか解決方法がないことを知り、フレンの胸に描いた魔

法陣を消そうと、小屋に現れる。
フレンと軽い戦闘になり、その戦闘で正しい選択肢を連続して選ぶことにより魔法陣を消せるか消せないかクリア

できるかどうかかわる。



【人形を人間にする魔法】
禁忌魔法のうちの一つ。魔法陣の中に別々の人間から集めた臓器を実際の配置通りに並べ、血の変わりに赤ワイン

を、肉の変わりにパンを置き、それらに魔力を通して自分の体内へと移す。
そうすれば人間になれる。
術者自身の体から出る魔力が必要になるため、術者の魔力が体内にあるだけの人形単体ではこの魔法を使えない。
その上、かつてこの魔法を使おうとしたフレン・マカヴェルは、人間になった人形が暴走し、殺されかけたために

この魔法を失敗作としている。



【登場人物】

『上崎遠也(うえさき とおや)』
168cm 52kg
本作の主人公。光道学校に通う二年生。裕福な家庭に生まれ育ったが中学校時代に両親を亡くしており、それ以来

両親の残した遺産と西洋風の屋敷に一人で住んでいる。
髪の長さは、前髪が目をちょっと越すぐらい。M字にして分けている(眉の間に髪の束)黒髪
父親が会社を設立し、そのおかげで何不自由なく暮らしていたが両親の死とともにすべてが崩れ去る。
会社を伯父に取られてしまい、その上進学するはずだった隣の市の私立高校も、金銭の都合のため進学をあきらめ

る。
中学時代に態度が偉そうだという、身に覚えのない理由でいじめに遭っており、そのいじめから脱却する為にも私

立高校に進学するつもりだった。
それがかなわず公立の高校に進学するが、中学時代の噂が既に学校中に広まっていたため、いじめとまではいかな

いが友達が一人もいないという状況に追い込まれる。
学力は成績トップ。それが裏目に出ていることを自分でもわかっているが、伯父から父親の会社を取り戻すために

学力を自ら下げるようなことはしない。
毎日、家と学校の往復。家では父親が残した書斎に篭って本を読んでいる。
そこで、表紙にMagicと書かれただけの本(『魔法書』)を偶然に発見する。
暇つぶしに内容を訳したページがたまたま禁忌魔法の『人形に命を与える魔法』であり、これを使えば人形が自分

の友達になってくれるかもしれないと思う。
だが、この頃はまだ完全に信じきったわけではなく、直後に「ばかばかしい」と自分の考えを捨てている。
後の那禾藤礼子との出会い、友瀬光との問題からこの魔法を信じ、実際に人形に命を与えフレンを誕生させる。
高校一年生のとき、本人か気付いてないが大通りで偶然にも友瀬の命を助けている。

『友瀬光(ともせ こう)』
172cm 60kg
光道学校に通う二年生。上崎遠也と一年生のときから同じクラス。
黒髪で、季節に関係なく灰色のニットを被っている。
周りにうまく溶け込み、友人も多く、クラスのムードメーカーのような存在。
しかし、周りの友人関係は不良が多い。本人も自分が不良なんだとは自認している。
成績だって良いわけじゃない、授業だってよくサボる。
しかし、本人の人の良さや明るさのおかげで不良以外の友人もたくさんいる。
ケンカが強く、他の学校の生徒とケンカしては勝っている。ケンカになる理由は大抵が相手がポイ捨てしただのマ

ナーが悪いだの。
そんなおかげで学校外には敵が多い。一年生のとき、他の学校の生徒に後ろからナイフで刺されそうになったとこ

ろを偶然に遠也に助けられる。
それ以来、クラスで一人浮いている遠也を気にかけており、友達になりたいと思っていたが今の自分の友人関係、

クラスでの立場等のせいで葛藤する。
二年生になってようやく話しかけ、友達になり始めた時に二人の間で誤解が生じる。(それが原因で遠也はフレン

に命を与える)
その誤解を解くために不良関係の友人とは一切手を切る。
遠也との誤解も解け、ようやく仲の良い友人関係になれたときに、【連続通り魔殺人事件】に巻き込まれる。



『那禾藤礼子(なかふじ れいこ)』
175cm 50kg
すらりとしたスタイルで、いつもスーツ姿。茶髪ロング。
那禾藤骨董店の経営者。偶然出会った遠也のことを気に入り、店に招き入れる。それ以来、遠也とは仲がよくなる


遠也のことをからかうのが大好き。
森宮骨董店を父親である森宮 雉(もりみや きじ)より受け継いで経営している。詳細は【那禾藤骨董店】参照


実は那禾藤雉とは血がつながっておらず、養子縁組。それでも、雉のことを実際の父親のように慕っていた。
養子に入る前の名前はコウレイ・マカヴェル。正体は魔法使い。フレン・マカヴェルの実の娘。母親であるフレン

・マカヴェルの魔法が誰にも信じてもらえず消えていったことが許せず、
いつかこの魔法を世界に信じさせ、母親の名前を世界に広めるために自分に不老不死の魔法をかける。(不老不死

の魔法も禁忌魔法の一つ)
店にある人形(フレン)は母親が最後に作った人形であり、形見。そのため、誰にも売らない。
(一度、借金をしていたときに人形を売られてしまったが、どうにか買い戻すという経緯がある。)
永い時を一人(と一体)で生きてきたがあるとき雉と出会い、そのまま養子縁組する。雉は礼子の正体、存在理由

をすべて礼子に聞かされるが動じることなく養子に迎える。
その際、コウレイを入れ替えてレイコウ→レイコ→礼子とした。
人形は誰にも譲る気はなかったが、偶然出会った遠也が『魔法書』を持っていたこと、そのなかに母親が作った禁

忌魔法『人形に命を与える魔法』があったことから、母親の魔法の証明になる母親の存在の証明になると思い、遠

也に人形を譲り、魔法を手伝う。
(ルート2)【連続通り魔殺人事件】で遠也が死んでから十年後、遠也の屋敷で自らが朽ち果てるのを待つだけの

フレンを迎えに行き、母親が完成させきれなかった【人形を人間にする魔法】が完成したから人間になりたいかと

問う。
(ルート3)人間になることを望んだフレンに魔法をかけて人間にし、店へ連れて帰る。そこには礼子の娘と夫らし

き人物がいる。

『フレン (friend dollから付けられた)』
160cm ?kg
フレン・マカヴェルが最後に作り出した球体間接人形。この人形も、命を与える魔法の実験に使われる予定だった


フレン・マカヴェルの死後、娘のコウレイ・マカヴェル(以下、礼子)が形見としてトランクに入れて持ち歩く。
森宮雉に養子縁組し、骨董店を受け継いでからはそこに飾られるようになる。
友也が魔法をかけて命を吹き込み動き出すようになる。

感情豊かで笑顔が可愛らしい。友也に「人間より人間らしい」と言わしめたほど。
しかし、術式で描いた魔法陣に誤りがあったため自我や感情をコントロールする部分に問題が生じ、結果、【連続

通り魔殺人事件】を引き起こしてしまう。
その後の展開は『森宮礼子』と【連続通り魔殺人事件】参照。
コーヒーが好きで、礼子に教わり自分でも淹れられるようになる。

『フレン・マカヴェル (禁忌魔法使い 女性)』
礼子の実の母親であり、フレンの製作者。
『自然的魔法』に魅力を感じなくなり『禁忌魔法』へと踏み込む。
もともと人形を作る技術を持ち合わせていたことから、【人形に命を与える魔法】を完成させる。同時に【人形を

人間にする魔法】も作っていたが、失敗に終わっている。
【人形に命を与える魔法】が完成するも、周りに人間に信じてもらえず、そのまま病に倒れる。

『ロイツ・マクラーニ(学者)』
『魔法書』の製作者。太古の建造物等が人力だけで作られたわけがないと考え、研究していたときに太古に魔法が

存在していたという事実にたどり着く。
そこから『自然的魔法』と『禁忌魔法』の存在を知り、それらの術式を一冊の本にまとめる。
彼の死後、その本の行方はわからなくなっていたが、遠也の父親の書斎にて発見される。

『上崎和幸(うえさき かずゆき)』
上崎遠也の父親。生前はオカルトマニアで、書斎は今でも怪しい本で埋まっている。
偶然『魔法書』を手に入れるも内容を理解できず、書斎に置きっぱなしにする。

《各ルート説明》
【共通ルート】

ルート1end

【共通ルート】

ルート2end

【共通ルート】

ルート3end

【共通ルート】

ルート4end

【共通ルート】

グランドルートend

《テーマ》
『友達』『友情』『変わらないもの』『相手を思いやる心』

《ルート1(所謂普通のエンド)》
最後のセリフ「行って来ます」
ゴールシーン 主人公が友達と遊びに行くときに、部屋においてある『友人』に「行って来ます」を言う。

起 友達のいない主人公。クラスでは一人ぼっち。
   周りの主人公への関心や興味は0

承 父親の書斎で魔法の存在を知って、ある女性から手に入れた人形に命を吹き込む。
  初めて出来た友人が嬉しくて、一緒に遊ぶ。
 
転 しかし、主人公はクラスに友達が出来て、人形とあまり遊ばなくなる。
  人形に遊びに行こうと誘われる。
 (『遊ぶ』or『遊ばない』)
  『遊ぶ選択』
  フレンと楽しい日々を過ごすが人形である自分と人間との差を感じ、それが積もり積もって
  魔法の欠陥を引き出し、思考回路が狂い、人間になるための儀式を行う。
  それは、『人間の臓器を集めて魔法で人間になる』というもの。

結 完全に狂ってしまったフレンをもとに戻すことは難しく、葛藤の中主人公はフレンを破壊する。
  後日、友達と遊びに行く主人公は、部屋に置いてあるフレンの形見を身に着け、写真に
  『行って来ます』と告げ部屋を出て行く


《ルート2》
最後のセリフ「行って来ます」
ゴールシーン 主人公が友達と遊びに行くときに、部屋においてある『友人』に「行って来ます」を言う。

起 友達のいない主人公。クラスでは一人ぼっち。
   周りの主人公への関心や興味は0

承 父親の書斎で魔法の存在を知って、ある女性から手に入れた人形に命を吹き込む。
  初めて出来た友人が嬉しくて、一緒に遊ぶ。
 
転 しかし、主人公はクラスに友達が出来て、人形とあまり遊ばなくなる。
  人形に遊びに行こうと誘われる。
 (『遊ぶ』or『遊ばない』)
  『遊ばないを選択』
 その日を境に、まったく人形と遊ばなくなる。
  そのため、さびしくなった人形が、主人公と遊んでもらうために人間になろうとする。
 (遊んでもらえないのは自分が完全な人間ではないからと考える)
  その方法は『人間の臓器を集めて魔法で人間になる』
  なので、連続殺人をするようになる。

結 主人公は魔法を使って、人形を元の動かない人形に戻す。
  後日、友達と遊びに行く主人公は、部屋に置いてある人形に
  『行って来ます』と言って部屋を出て行く。


《ルート3》
(三週目のプレイ。ここで遊ぶを選ぶとルート1のままなので、遊ばないを選択させるように誘導)
最後のセリフ「主人公さんが与えてくれた命(魔力)なので、尽きるまでここにいます。」
ゴールシーン 小屋のようなところで人形が半分朽ちかけている。そこに大元の持ち主の女性が現れて、人間にな

るかこのままでいるかを問う。

起 友達のいない主人公。クラスでは一人ぼっち。
   周りの主人公への関心や興味は0

承 父親の書斎で魔法の存在を知って、ある女性(魔法使い)から手に入れた人形に命を吹き込む。
  初めて出来た友人が嬉しくて、一緒に遊ぶ。

転 しかし、主人公に別な友達が出来たため、人形と遊ばなくなる。
  人形に遊びに行こうと誘われる。
  (『遊ぶ』or『遊ばない』)
   『遊ばないを選択』
  その日を境に、まったく人形と遊ばなくなる。
『この部分に細かいフラグを仕組む、それ次第でルート2orルート3』
  寂しくなった人形は、同じ理由同じ方法で事件を起こす。
  しかし、主人公の魔法に欠点があったため、思考回路が狂い、
  『主人公の為に人間になる』ではなく『人間になりたい』へと思考が変わる。
  
結 人形は人間になるための臓器の一つとして、主人公を殺してしまう。
  そこで当初の目的を思い出し、途方に暮れる。
  そして、小屋のような場所に閉じこもる。
  小屋のようなところで人形が半分朽ちかけている。
  そこに大元の持ち主の女性が現れて、人間になるかこのままでいるかを問う。
 (『人間になりたい』or『このままでいたい』)
  『このままでいたい』
  「主人公さんが与えてくれた命(魔力)なので、尽きるまでここにいます。」
  消えていく魔力の中で人形は主人公の夢を見て朽ち果てる。

《ルート4》
最後のセリフ 「私の娘の友達になってやってくれ」 「初めまして。これからよろしくね」
ゴールシーン 人間になった元人形は、大元の持ち主の女性の娘と握手をする。

起 友達のいない主人公。クラスでは一人ぼっち。
   周りの主人公への関心や興味は0

承 父親の書斎で魔法の存在を知って、ある女性(魔法使い)から手に入れた人形に命を吹き込む。
  初めて出来た友人が嬉しくて、一緒に遊ぶ。

転 しかし、主人公に別な友達が出来たため、人形と遊ばなくなる。
  (ここで、遊ぶか遊ばないかで分岐。)
   『遊ばないを選択』
  その日を境に、まったく人形と遊ばなくなる。
  寂しくなった人形は、同じ理由同じ方法で事件を起こす。
  しかし、主人公の魔法に欠点があったため、思考回路が狂い、
  『主人公の為に人間になる』ではなく『人間になりたい』へと思考が変わる。
  
結 人形は人間になるための臓器の一つとして、主人公を殺してしまう。
  そこで当初の目的を思い出し、途方に暮れる。
  そして、小屋のような場所に閉じこもる。
  小屋のようなところで人形が半分朽ちかけている。
  そこに大元の持ち主の女性が現れて、人間になるかこのままでいるかを問う。
 (『人間になりたい』or『このままでいたい』)
  『人間になりたいを選択する』
  「わたし、人間になりたいです…」
  女性は完成した魔法で人形を人間にして、家へ連れて帰る。
  そこには、女性の娘がいる。
  「私の娘の友達になってやってくれ」
  「初めまして。これからよろしくね」
  人間になった元人形は、大元の持ち主の女性の娘と握手をする。

《グランドルート》
ファクター 【禁忌魔法】
以下、グランドルート(ハッピーエンド)
しかし矛盾点が多く、再考すべき。(20170421追記)
「矛盾点、疑問点」
・教会は魔法の存在を消そうとしている?
・教会は魔法も禁忌魔法もどちらも消そうとしている?
・フレンの欠陥とは通り魔事件につながる思考回路のこと?ならば尚の事協会は回収しようとするのでは?
・同時進行で通り魔事件を入れたとして、それではフレンが単独で動くことになる。
主人公サイドはフレンを守ろうとしているのにその守られる人物が勝手に動き回るのでは守りようがない。
・「遊ぶ」を選択した時点で通り魔事件フラグは立たなくなるので、他の欠陥が発覚?

【共通ルート】


【過去回想】明かされなかった過去の話。
礼子さんの母親が教会サイドに、禁忌魔法を完成させたことがばれて殺されて、礼子は子供だったために(宗教的

に子供を殺すのはまずい)教会サイドに引き取られ、教育役がつく。(のちの父親)
禁忌魔法の資料は保管。
その際、協会側はまだフレン(人形)がまだただの人形であったために礼子が形見として所持することを認める。
教育係は礼子に情が入り養子縁組する。普段の顔は骨董店であり、礼子に引き継いだ後死んでいる。
また、根っからの教会サイドの人間なわけではない。
教会サイド所属中に教育者が死んだのと、自立できる年だったため教会サイドを抜ける。
と、同時に第三勢力に所属し母親の無念を晴らすために禁忌魔法について研究する。
教会サイドは、過去に礼子の母親の禁忌魔法の資料を流出させてしまい、それが魔法書に組み込まれる。
礼子は魔法書の存在を知らなかったが、主人公が持っていたことで存在を知り、母親が残した禁忌魔法を再現させ

る。

「遊ぶを選択」

フレンが魔法で命を与えられた段階で礼子は第三勢力に報告しており、また、教会サイドもフレンの存在に気付い

ている。
第三勢力にフレンを世界に公表させろといわれるが、様子見と言い訳し逃れる。
欠陥を疑っているため。
教会サイドに禁忌魔法のことがばれてフレンを取られそうだと第三勢力に相談し、第三勢力はフレンが教会サイド

に渡ってしまえば魔法の存在をまた消されると思い、教会サイドに全面戦争を仕掛ける。
それで第三勢力が優勢になるが、途中でフレンが欠陥品だとわかったために、教会サイドがフレンの回収から手を

引き、また、第三勢力も魔法がまだ欠陥だったとわかってフレンの回収をあきらめる。

欠陥が原因でフレンがおかしくなるor今の姿を保つことが困難になる。
一時的な解決方法は人形に戻すこと。いつか必ずもう一度会えるよと約束をし、
フレンを主人公がただの人形に戻す。

主人公は人形に戻ったフレンを自分の部屋に置く。
友人からのメールを受け、魔法書を机に置き、フレンにあいさつして部屋を出る。

数年後、主人公はフレンにもう一度魔法をかける。
その場には、第三勢力もいる。
主人公は年月をかけて、フレンを人間にする魔法を礼子と第三勢力の力を借りて完成させていた。
第三勢力が魔法を世界に公開したいのと同じように、礼子、主人公も公開したい。
こんなにすばらしいものが存在しているのだと。(教会サイドは第三によって壊滅させれらている)
人間にする瞬間を世界に公表する。

魔法って素晴らしい。
end

補足
禁忌サイド フレン、主人公、礼子

教会サイド 敵

第三勢力 礼子とその仲間たち


《シナリオ(途中まで)》
シナリオには初稿と、二年後に書き直した再稿の二種類があります。
共に途中までしか書かれておりません。
ここでは、前者のほうを公開します。

log_lastwrite_20110919

『ピノキオにはなれない』

それは、夜の気温が下がりはじめ、寒いと感じるようになった頃。
たった一冊の本が原因で、始まったお話。

体温を持った彼と、体温を持たなかった彼女のお話…。



肌を撫でるように冷たい風が、ゆっくりと吹いて窓から入ってくる。最近は、日が落ちると急に寒くなる。
なので、窓を閉めるかどうか、俺は悩んでいた。
周りには、本棚に詰まった無数の本。
色あせた本や、真新しい本。分厚い本から薄い本まで幅広くあるが、どれも表紙は英語表記だ。

「まぁ、そこまで寒いわけではないから、このままでいいか」

そうつぶやき、手に持っていた本を本棚に戻す。
両親が死んでから、こうやっての父さんの書斎にいることが多くなっていた。
それは、死んだ父さんのことを思っての行動なのかどうか、俺自身にもわからない。
ただ、ここにいると気持ちが落ち着く。
それだけだ。

「しかしまぁ、よくこれだけの本を集めたな」

所狭しと並べられた本棚を見上げる。ざっと見ただけでも百冊以上はありそうで、すべて読み終わるのはいつにな

るのか見当もつかない。
なにか面白そうな本はないかと、適当に本棚を眺めていると、一冊の本が目に入った。

『Magic』

表紙にはそれだけが書かれていて、、それ以外は何もない。
赤い表紙で、所々が痛んでいた。
これはまた胡散臭い本だなと、内心思いながらも本を手に取り、表紙を開く。
文章は全て英語で書かれていた。いくつかの章に分かれていて、それぞれの章で別の魔法について説明しているよ

うだ。
試しに、最初の章を開いてみることにする。

「う…ん、まあ、読めるか…な?」

文字を指でなぞりながら、順番に頭の中で訳していく。
途中、分からない箇所は辞書で調べ、訳した文は紙に書き写し、いつの間にか作業は本格的になってきていた。
一度始めると、とことんまでやらないと気が済まない。

面倒な性格だということは、自分でもよくわかっていた。



ようやく最初の章を訳せたときには、時計の針が十二時を越え、日付が変わっていた。

「…まぁ、訳せたしいいか」

いくら高校での成績が良いからとはいえ、高校生でここまで訳せる自分はすごいんじゃないだろうか。そんなこと

を思いながら、訳を写した紙を見る。
訳している途中にも気づいてはいたが、その内容はとてもじゃないが、信じられるものでは無かった。
本に書いてあった内容。

それは――――『人形に息を吹き込む魔法』だった。

まあ、なんと胡散臭い方法だろうかとか、どこの都市伝説だとか、思うことはいろいろある。
けど、嘘が嫌いな父さんの書斎にあった本なんだから、嘘である可能性は低いだろう。
となると、やっぱり…。

「本物…か」

信じれるわけがない。
信じられるわけがないけど、父さんの本だから、もしかしたら本物なのかもしれない。
…なら、確かめればいい。
そう、確かめれば…。
そのための方法。
それは、実際に魔法を使って、人形に息を吹き込むということ。
もし、魔法が本物で、本当に成功したら、人形には俺の友達になってもらおう。
だって、悲しいことに、俺には友達と呼べる存在がいないから。
ほしくないわけじゃないんだけど、誰も寄ってこない。
理由はよくわからないんだけど。
それなりに、寂しいと思った。放課後に友達同士で遊びに行ったり、休日に家に遊びに行ったりというのが、すご

くうらやましかった。
同時に、あきらめた。

「…はぁ」

今までの人生を思い出して、それに対して嫌悪感を覚えた。
そして、魔法を使おうなんて思っていた自分に対しても。
人形を友達になんてできるわけがない。
友達は、そうやって作るものじゃないしな。
訳を書いた紙を栞代わりに本に挟んで、本棚にそっと押し込んだ。
無数に並べられた本を見て、軽くため息。よく見れば、どの本にも『Magic』とか、そう言ったことが書かれてある


父さんは、魔法に興味があったのだろうか。
魔法に、なにを望んでいたのだろう。
魔法で、何かを変えようと思っていたのだろうか。

「ま、いっか。もう寝よう…」

振り向いて、出口に向かって歩き出す。
明日は、友達できるかな…。



「助動詞は文字通り、動詞を助けるもので……」

教室の前の方から聞こえてくる、業務的な声。
同じことを何度も言っているせいか、言葉に感情が込められていないように感じる。
それは、高校に入学してから一年経って、余計強く感じるようになった。

「主な助動詞には……」

学校の授業を聞くたび、いつも思う。
教科書を見れば分かるのに、授業なんて意味あるんだろうかって。
多分、クラスメイトの何人かには意味がないと思う。
彼らは学校に来て友達と喋り、遊びたいだけ。
でも、それじゃあ問題があるから、形式上は授業を受けるんだと思う。

「じゃあ、上崎。この英文を訳してみろ」

「“彼女はその人形が動くはずがないと彼の友人たちに言った”です」

英語は小さい頃から母さんに英会話に行かされていたから得意だ。
母さんには生前よく言われた、将来は父さんの会社を継ぐんだからしっかり勉強しとけって。
まあ、今の会社は親戚のおじさんが継いだんだけど。
小さいため息をついて、背もたれに寄りかかる。
俺が完璧な答えいっても、みんな無反応。
休み時間に「上崎君、ここ教えてよ」的なことがあるんじゃないかと、想像していた頃の自分が悲しい。

「……ん?」

視線を感じて後ろを振り向くと、一人の男子生徒が目をそらした。
金髪で、学制服を着崩していて…。
確か、名前は、友瀬。
友瀬光(ともせ こう)。
一年の頃から同じクラスで、いつも誰かとしゃべって、いつも笑顔。
俺とは対照的な存在だ。そんな人が、俺なんて見るわけがない。きっと、見間違いと勘違い。
でも、何となく気になって、友瀬をちらちらと見ていた。

「おい上崎、授業に集中しろ」

「あ、はい…。すいません」

それなら、集中できるような楽しい授業をしろと、心の中で文句を言う。
俺は、何か間違ったことを言っているかな。



休み時間。学校にいて、一番暇な時間。
話しかける相手もいないから、一人で本を読んでいた。
そんなときだった。

「なあ、上崎」

唐突に俺を呼ぶ声。一瞬身体がこわばる。
恐る恐る顔を上げると、声の主は前の席に座って、俺の方を見ていた。
友瀬光だ。

「な、何だ?」

「そんなにキョドんなって」

そう言って、人当たりの良い笑顔を俺に向けてくる。
作られた笑顔とかじゃなくて、心からの笑顔。
こんな笑顔を向けられるのは、久しぶりだ。

「あ、ごめん」

「謝んなくていいよ。…なに読んでんの?」

「これは、昔の作家の本だよ。昔に書かれた、恋愛小説みたいな感じかな」

「へー、なんて作家?」

「舟治大碁っていう作家。興味あるなら、買ってみたら?」

「んー、俺はあんまり本屋とか行かねえからなー。…と、そうだ、上崎が連れてってくれよ」

「…へ?」

あまりに突然の提案に、間の抜けた声を出してしまう。
どうして、そんな流れになったのかとか。
どうして俺が連れていくのかとか。
そもそも、なんで話しかけてきたのかとか。
疑問が頭の中をぐるぐるぐるぐる。

「そうだな、今日の放課後なんかどう? 用事ある?」

「いや、無いけど…」

「じゃ、決定。また、放課後にな」

チャイムが鳴ると同時に、友瀬は笑顔を残して自分の席に戻っていった。
これって、まさか。
もしかして。
放課後が気になって、とてもじゃないが授業どころじゃ無い。



放課後、そわそわ浮き出す足を押さえて、鞄の中に教科書を詰め込む。
あえて、その動作もゆっくりにして、友瀬が声をかけてくるのを待っていた。

「上崎」

来た。友瀬だ。

「お…おう。もう準備できたからいつでも――」

「――ごめん」

「え?」

そう言って、友瀬が俺に向かって頭を下げる。
いきなりそうされても、なにがなんだか分からなかった。

「別の友達とさ、今日約束してたの忘れてたんだ。だから、今日はムリっぽい。ほんとにごめん!」

あ…そっか。

「あー、うん」

やっぱり、そうなるんだ。

「ほんとにごめんな! この埋め合わせはいつかするから!」

もう一度、深く俺に向かって頭を下げた後、友瀬は教室のドアから廊下に出ていった。
…分かってる。
友瀬には悪意なんて欠片ほどにもない。ただ、タイミングが悪かっただけ。
むしろ、友瀬は友達との約束を守ろうとしたんだから、良い奴じゃないか。
そう、良い奴なんだ。
また、別の日にって言ってたし。
…けど、寂しかった。



午後から降り出した雨が、ポツポツと傘に当たって、不規則なリズムを刻む。
濡れたアスファルトの上を歩く俺の足が、ビチャビチャと不快な音を奏でる。
この空みたいに、泣き出せてしまえば楽なんだろうか。
別に、悲しいわけではないけど、悲しくないわけでもない。
自分でも、よくわからなかった。納得している自分と、納得していない自分が戦争をしている感じだ。

「あーもーめんどくせーっ」

気がつけば、空に向かって叫んでいた。
あわてて周りを確認する。
…どうやら、この道を歩いているのは俺だけのようだった。
歩きながら、もう一度周りを見渡す。
この見慣れた通学路も、隣に誰かいるのといないのでは、違う風に感じるのだろうか。
あの家の形も。
このアスファルトの色も。
あの骨董店の雰囲気も。

「こんな天気だ。確かにめんどくさい」

不意に後ろから聞こえた女性の声。それは俺に向けられた声。
誰かと思って振り向くけど、声の主は全く知らない人だった。

「あ…、その。すいません」

「謝らなくてもいい。私だって叫びたいくらいだ」

背が高い女性。茶色い髪をしている。
年齢は…二十後半から、三十前半ぐらいだろうか。
知的そうな人で、ぱっと見た印象は先生とか、そんな感じだった。

「まあ、叫ぶのは自由ですけど…誰ですか?」

「ん? ああ、すまない。私は金上礼子だ。ここの骨董店の店長をしている。礼子でかまわないよ」

礼子と名乗った目の前の女性が、自分の後ろの店を指さす。
その先には、古びた怪しげな店。何度もこの道は通っているけど、ここが骨董店で、女の人が店長をやっているな

んて知らなかった。
俺は、意外にも自分が住んでいる町のことを知らないらしい。

「えっと、俺は上崎、上崎遠也って言います」

「ほう、いい名前じゃないか。よろしく」

「よろしくおねがいします…」

「ここで会ったのも何かの縁だ。お互い自己紹介も済んだし、よかったら店に来ないか? コーヒーぐらい出すよ



「あー、えっと…」

急すぎる展開に戸惑うのは、誰でも同じだと思う。

「私もどうせ暇なんだ。客なんて滅多に来ないからな」

苦笑いを浮かべる礼子さん。まあ、これだけ存在感のない店なら、客が来ないのも何となく分かる気がする。
まあ、悪い人じゃなさそうだし、行っても大丈夫だろう。

「じゃあ、まあ、行きます」

「よし」

短くそう言って、礼子さんはドアを開けて店内に入っていく。俺はその後ろについて行った。
店内は、怪しげな雰囲気に包まれていた。
いかにも高級そうな鏡とか、イスに座っている大きな人形とか。
怪しげに見えるのは、それらの商品のせいと、少し暗めの照明のせいだろう。

「ま、その辺のイスにでも座っといてくれ。コーヒーを入れてくる」

「あ、はい」

人形の向かい側のイスに座る。真正面から見てみれば、人形はとても綺麗な瞳をしていた。
俺とたいして変わらない身長。銀色の髪。外国人のような顔立ち。フードのようなかぶりもの。
正直、美しいと思った。

「どうした上崎。うちの人形に惚れたのか?」

からかいを含んだ声色でそう言いながら、礼子さんが戻ってきた。

「いや、別にそういうわけじゃ…」

「ずっと、ぼけーっと見てたじゃないか」

コト、と俺の前にコップが置かれる。湯気の立つ中身を見ると、ブラックコーヒー。甘いのは苦手だからちょうど

良かった。

「なんていうか、美しいなーって思って」

「ほう…。確かに、上崎の言うとおりだ。この人形は美しい。命を持っていないのが、おかしいくらいにな」

立ったままコップの中身をすすり、目を細めて人形を見つめる礼子さん。

「命を持っていないのがおかしいって、どういう意味ですか?」

「言葉のとおりだよ。この人形は、生きているべきということだ」

一口、コーヒーをすする。
うん、おいしい。
俺は冷静だ。
だが、何を言っているんだろう、この人は。
まるで、生きた人形がすでに存在しているような言い方。
そんなのあるわけが――
――あった。

「魔法…」

思わず、口に出してしまう。

「ほう、魔法ね。それは良い案だ」

感心した礼子さんが、目を閉じてうなずく。けど、すぐにやめて目を開けた。
悲しそうな目をしている。

「良い案だ…けど、ダメだ」

「ダメ?」

「そう。この世界にはもう魔法がないんだ。信じる人がいないと、宗教だって廃れる。それと同じことだ」

「なんだか、昔は魔法があったみたいな言い方ですね」

「ん? あったぞ?」

また、さらりとそんなことを言う。

「なんだ、お前から魔法って言ったくせに何も知らないんだな」

からかいを含んだ声色。顔が熱くなっているのが、自分でも想像できた。

「ま、昔と言っても大昔だよ。昔は、今みたいに便利な世の中じゃなかったからな」

「何でそんなこと知ってるんですか?」

「人生、日々勉強だよ。少年」

ほんと、変わった人だな。
まさか、この人何百年も生きてる魔女とかなんじゃないか……?
……アホらしい。
ちいさく、自分に対してため息をついた。
ふと、店内の時計を見る。
入店してから十分。

「どうした、今日は何か用事があるのか?」

俺の視線に気づいた礼子さんが、心配そうな顔をする。

「いや、大丈夫です」

「じゃ、もっとゆっくりしていきな。久々の話し相手なんだ。もっと、いろいろ話そうじゃないか」

そう言って、どこからかカンケースを取り出し、テーブルにお菓子を並べ始めた。
まあ…家にいても暇だし、いっか。

           ◆

ドアを開けて外に出る。すっかり日は暮れていて、夜空には星が見えた。

「また、いつでもおいで上崎」

後ろから聞こえる礼子さんの声。振り向いて、軽く頭を下げた。
やさしい笑みをして、礼子さんは店内へと戻っていく。
完全に店内に入るのを見届けて、ゆっくりと歩き始めた。
店内でのことをぼんやりと思い出しながら、夜空を見上げる。
さすが、人と長話するのが久々というだけあって、礼子さんがためていた話のネタは豊富だった。
魔法が存在していたころの話。
魔法そのものについての話。
店を建てたときの話。
他、色々。
どの話もすごく興味深い話で、ずっと聞き入っていた。
多分、礼子さんが饒舌なせいもあると思う。それに、魔法なんて信じられなかったのが少しだけ信じられるように

なった。
というより、信じてみたくなった。
魔法があまりにも便利そうで、あまりにも幻想的だから。
もしかしたら、俺の願いを叶えてくれるかもしれないから。
願うものでも、叶えてもらうものでもないけどさ。
……友達がほしいという願いはさ。



いつもどおりの日常。
いつもどおりの学校。
休み時間になると、いろんな人が現れる。
笑う人。
騒ぐ人。
泣き出す人。
けど、どの人も一人っきりじゃない。
一緒に笑う人。
一緒に騒ぐ人。
なぐさめる人。
みんな、そばには友人らしき人がいる。
みんな、どういう形であれそんな存在がいる。
正直、うらやましい。
ある時、俺は友達を作ることをあきらめた。いや、あきらめるしかなかった。
みんな、俺から離れるから。
まるで、腫れ物を扱うような不自然な接し方しかしてくれなかったから。
きっと、友瀬だって友達にはなってくれない……。


(回想)
あれは、いつのことだったか正確には覚えていない。
ただ、多分中学生のころだったと思う。
まだ、両親が健康に生きていて、父さんの会社も順調だったころ。
でも、そのころから俺には友達ができなかった。
無口な性格も原因にはあったと思う。
みんなが俺から離れていったのは、ほんの小さなきっかけ。

「おい上崎。お前のお父さんって、社長なのか?」

「え…? うん。そうだけど……?」

「あー、なるほど。だからお前ってそんなに偉そうな態度なんだな」

「偉そう…? え、なんで? 俺は別に……」

「嘘付けよ。どうせ、心の中では俺らのこと見下してんだろ? こんな低俗で貧乏な奴らとは話したくないってさ

!」

そう言ってきたのは、前から俺のことを良く思っていなかったグループの一人。
そして、そのグループはクラスの中心的存在。

「嘘なんてついてないって! それに、俺はそんなこと思ってない!」

「お前さ、黙れよ。お前いつも無口だし、話しかけても目すぐそらすし、会話に入ってこないし。思ってることが

そのまんま行動に出てんだよ」

元々、人と話すのはそんなに得意じゃなかった。
だからいつも無口で、一人で本を読んでいることが多かった。
でも、それが原因でこんなことを言われるなんて思ってもみなかった。

「無口なのは…だって、俺……」

「ほら、今だって目そらしたじゃねえか。なぁーみんな! こいつ、俺らみたいなのとは話したくないんだってさ

! もう、話しかけないでおこうぜ!!」

「そうだな」と意味するように、クラスのみんなが一斉にうなずく。
助けを求めて周りに目をやるけど、みんな俺から目をそらした。
俺は、ただただ黙って下を向いて、涙をこらえるだけで精一杯だった。
これが、中学時代で終わればよかった。
突然の、両親の事故死。
俺に残された遺産と会社は、親戚のおじさんが持っていった。
理由は簡単。
 
「お前が社長になるのは早すぎる」

そうして俺に残されたのは、一人で住むには大きすぎる家と、ほんの少しの遺産。
その金じゃ、地元の高校に通うのが精一杯の金額だった。
でも、地元の高校には、同じ中学の生徒が何人もいた。
当然のように、俺の噂とあの時のことが学年中に広まった。
結果、俺に話しかける人は誰もいなくなり、周囲からは腫れ物のように扱われるようになった。
そして…友達を作ることをあきらめた……。

(回想終了)

…だめだな。
暗くなりすぎて、昔のことを思い出してしまった。
一番忘れてしまいたい事なのに。
……気分転換に、コーヒーでも買ってこよう。
教室を出て廊下を歩く。
階段を通り過ぎようとしたとき、誰かの話し声が聞こえた。
ふと、足が止まる。
…その内容がなんでもない普通の話なら、通り過ぎていた。

「上崎ってよー、なんかウザくね?」

「あーわかるわー。なんか、いっつも本ばっか読んでるしよー。ぶっちゃけキモイ」

「なんか、いかにもオタクって感じだよなー」

そのセリフに返事するかのような笑い声。
その笑い声が耳の奥で響いて、気分が悪くなる。
手は汗だらけになって、心臓の鼓動が早まる。
なぜ、なんで俺がそんなことを言われてるんだ? なにか、他の話もしてるようだけど聞こえない。
わからない。ワカラナイ。
俺がわからなくても、近づいてくる笑い声と足音。
逃げたくても足が動かない。まるで、廊下と足が一体化したように動かない。
なぜ動かないのかわからない。
ワカラナイ――

「あ、れ……上崎…?」

聞き覚えのある声。
最近聞いたことのある声。
恐る恐る顔を上げた。
――光だ。
友瀬光。

「と、友瀬……」

俺が名前を呼ぶと気まずそうな顔をする。
もう、それだけで十分だった。
前にいる集団を押しのけて、階段を走り下りる。

「お、おい上崎!! ちがうんだよっ!!」

後ろから友瀬の声が聞こえたけど、足を止めることはなかった。
言い訳なんて、聞きたくなかった。
それに、もう、ここにいたくなかった。
一刻も早く、この建物から外に出たい。その気持ちしかない。
あっという間に一階について、上履きのまま外に飛び出した。
それでもしばらく、そのまま家に向かって走り続ける。
冷たくて新鮮な外の空気が俺の肌をかすめていく。
周りの人の視線が走る俺を追う。
大きく息をするたびに冷たい空気が体の中に入ってくる。
――そして、俺の足はようやく動かなくなってその場に崩れ落ちた。
肩で大きく息をしながら、道の真ん中で大の字になる。
普段より低いところで見る空はとても高くて、青くて、きれいで、吸い込まれそうで怖い。
太陽の光が目にしみこんで、何も考えられなくなる。

「空を見上げると無心になれる。考えをまとめたいときや、辛くなったときは空を見るんだぞ」

父さんは、小さいころの俺にそう言ったことがあった。
どうやら、それは本当らしい。
なぜなら、考えがまとまって、結論が出たから。

――魔法を使おう。



家に帰ると、すぐに書斎に駆け込んだ。あの本を探して順番に棚を見てまわる。
体の内側から殴られているように、心臓が鳴り響いていた。
順番に本棚を見て、見つからないと余計に心臓がうるさくなる。
こんなことなら、何か目印でも付けておくべきだった。

「――あった。これだ」

最後に見た本棚で、それを見つける。
『Magic』とだけ表紙に書かれた本。
ここに存在しながら忘れられ、消えていった夢のような力。
魔法。
ページを開いて、はさんであった紙をとる。
英文を訳した紙。
今の俺になら、魔法を信じた俺にならこれを使うことができるはず。
人形でもいいんだ。
俺は友達がほしい。
笑いあえて、気兼ねなく話せる存在がほしいんだ。
もう、一人はいやなんだ。



必要な物と本を鞄につめて家を出る。外はまだ明るい。
腕時計を見ると、時間はお昼過ぎ。
時間は、どうやらたっぷりあるみたいだ。
自転車のかごに鞄を入れて、ゆっくりと漕ぎはじめる。
徐々にスピードは速くなっていった。
同時に、心臓の鼓動も早くなっていく気がした。
無心で漕いでいるうちに、礼子さんの店が見えてきた。
スピードを落として店に近づき、店の前に自転車を止める。
鍵を閉めていると、ゆっくりと店のドアが開いた。
出てきたのは知らない見たこともない男性。

「ありがとうございます。また。きてくださいね」

そう言いながら礼子さんも出てきた。そして、そのまま店内に戻ろうとして、目の端が俺をとらえた。

「なんだ、来てたのか」

腰に手を当てて、うれしそうな表情で俺を見る。

「今、来たとこです。さっきのはお客さんですか?」

「ああ。そうだ。久々に商品が売れたよ」

「久々って、あんまり売れてないんですか?」

「まぁ、触れるな。さ、入りな。コーヒーでもいれよう」

俺を手招きして、店内へと入っていく。

「ありがとうございます」

そういいながら俺は後をついていった。
店内は前に来たときと何も変わっていない。いったい、何が売れたというのだろうか。

「ブラックでいいんだよな?」

「あ、はい」

「じゃ、前と同じようにして待っててくれ」

そう言い残し、礼子さんは店の奥へと消えていった。
礼子さんに言われたとおり、鞄を床に置いて近くの椅子に座り、前と同じように人形を見つめる。
相変わらず、美しい人形だった。
表情はやさしそうと表現すればいいのか、どう表現すればいいのかわからない。
人間にはできなさそうな表情。

「また、見とれてる」

くくく、と喉で笑いながら礼子さんが戻ってきた。両手にはコップが二つ。そのうちのどちらかが俺のブラックコ

ーヒー。
立ち上る湯気から熱さが想像できた。

「いや、見とれてるわけじゃ……」

「いいんだ、いいんだ。好きなだけ見るといい。減るもんじゃあるまいし」

ニヤニヤと笑いながらコップを俺に手渡す。
受け取って、一旦、テーブルの上に置いた。

「――で、今日はどうしたんだ?」

「…話があるんです」

鞄の中から一冊の本と紙を取り出し、そっとテーブルの上に置く。
二つを見て、礼子さんの表情が一瞬で変わった。
楽しそうな表情から、真剣な表情へと。

「上崎。なんで、君がこの本を持っているんだ? …いや、その前にこの本が何かわかっているのか?」

「…はい。わかっています。中身も、ほら、訳しましたし」

紙を持ち上げて、礼子さんに見えるようにする。

「死んだ父親の書斎で、偶然見つけたんです」

「――何といえばいいのか。君と私が出会ったのが運命か、その本と君との出会いが運命なのか…。で、上崎はど

うしたいんだ?」

「……俺は……使いたい…」

しばらくの沈黙の中から、ようやく出た言葉。
それは、やっと口に出せた自分の気持ち。
自分の望み。
考えた末の結論。

「使いたいんです。…必要な道具も持って来ました。……一つを除いて」

「その一つは?」

礼子さんに問われて、無言で視線を移動させる。
礼子さんはその視線の先を見て納得したようにうなずき、口を開いた。

「――人形か」

「はい」

「人形…上崎が使いたいのは、人形に息を吹き込む魔法か……」

腕を組んで、目を閉じて、深く息を吸う礼子さん。

「俺には友人と呼べる存在がいないんです。作りたくても、作れない。
…だから、人形に友人になってもらいたいんです。…お願いします。その人形を、いや、彼女を俺に売ってくださ

い」

言い終わっても、礼子さんは黙ったまま腕を組んでいる。
考えているのだろうか。
なら、下手にしゃべらないほうがいいか。

「…ったく」

しばらくの沈黙の後、礼子さんが口を開いた。

「まったく、彼女の両親に結婚の許可を取りに来た彼氏じゃあるまいし、もっとほかに言い方があるだろう」

目を閉じながら、フフフと笑う礼子さん。
この反応はまさか――。

「――ダメだ。売ることはできない」

「そんな! 俺は…」

続きを言おうとした俺を礼子さんが手で止める。

「売ることはできない。彼女はこの店の商品ではないからね。…ただ」

「ただ?」

「ただ、魔法はかけてもいいぞ」

「…はい?」

言っている意味が一瞬わからず、頭の中にはてなが浮かぶ。

「魔法を人形にかけてもいいと言ったんだ。魔法は使う人を選ばない。ただ、使われるだけ。…だから、どう使お

うと君の自由だからな」

礼子さんはそう言うと、コーヒーをすすりながら訳を書いた紙に目を通す。

「本当にいいんですか?」

「二度も言わない。私の口は一つだからな」

「すいません」

「で、道具は持って来てるんだったな?」

「はい」と答えるまでもなく、礼子さんは勝手に俺の鞄の中をあさり始めた。
すぐにチョークを見つけ出し、慣れた手つきで床に陣を描き始める。
理由はわからないが、陣を描くにはチョークでないとダメらしい。
英文を訳すと、そう書いてあった。
というか、礼子さん、なんで手つきが慣れているんだ…?

「礼子さん、いいですよ。自分で描きます」

「いや、今のお前じゃ何もできない。そもそも、これは人形に息を吹き込むための陣じゃないしな」

再び、頭の中にはてなが浮かぶ。

「どういうことですか?」

「どうもこうも、上崎にはまだ魔力がないだろ?」

陣を描きながら、礼子さんは話を続ける。

「魔力陣っていうのを描いてな、君に魔力を供給しなくちゃならない。これはな、魔法を初めて使う奴ならみんな

が一度通る道だ」

「魔力陣……、それで供給された魔法はずっときえないんですか?」

「多分、な」

「多分?」

「うるさい。…まぁ、さっさとするぞ」

陣を描き終えたのか、礼子さんは満足そうな笑みを浮かべ、足元を見ている。
……いや、なんで?
なんでそんなに詳しいんですか?
魔法に関する知識が豊富にもほどがある。

「上崎、こっちに来て陣の中心に立て」

手招きされる。

「はい」と短く答えて、椅子から立ち上がって言われるがままに陣の中心に立った。

――それは、一瞬の出来事だった。

床に描かれた陣の線一本一本があたたかな光を放ち、俺の体を包み込む。
そして、その光は俺の体の中へとしみこんでいった。

「――いいぞ、終わりだ」

そう言われてから、ようやく光が消えていることに気がついた。
頭が理解する前に終わってしまって、何がなんだかわからない。
ただ、体の中が温かい。

「すぐ、終わりましたね…」

「まぁ、そんなもんだ。…気分はどうだ?」

「なんというか、いい感じです。……礼子さん」

「ん?」

「あなた、何者なんですか? 今やったことだって魔法の一つなんじゃないですか? 何で使えるんですか?」

頭に浮かんだ疑問を、いっせいに投げつける。
あまりにも謎な点が多すぎる。
なんだか、少し怖いとさえ感じるほどだ。

「んー……」

礼子さんはコーヒーをすすりながら、目を閉じて黙り込む。
そして、少し困ったような顔をした後、笑って言った。

「秘密だ」

「秘密ですか」

「ああ。秘密だ。人には一つぐらい秘密があるほうが面白い。…さ、準備も整ったし、次にいくぞ」

礼子さん。あなたの秘密は一つとかいうレベルでは無い気がします。
納得できていない俺に礼子さんが紙を渡してくる。
次…人形に息を吹き込む…。
本当に――いや、信じるだけだ。
信じればいい。

「で、手順はどうするんだ? 私は紙をしっかり読んでいないからよく知らないんだが」

「…ちょっと待ってください…」

文面をよく読み、内容を頭の中に詰めていく。
礼子さんも俺に近づいて紙を見る。

「えっと、まず地面に魔法陣を描いて、同じ陣を人形に小さく描くみたいです」

「あー、なるほどな。そりゃ確かにこんだけの魔法なら魔法陣は必要…か」

「礼子さん。魔法陣と魔力陣は何が違うんですか?」

気になったことは一つ一つ解決しないと気がすまない。

「あぁ。んーそうだな」

腕を組んで、目を閉じて、難しい表情をする礼子さん。
そんなに難しい質問をしてしまったのだろうか。

「簡単に言うとだな、魔力陣は魔力を与えてくれる陣。魔法陣は大量の魔力が必要なときに術者の魔力を増幅して

くれる陣だ」
 
と、一気に説明してくれる礼子さん。
言ってることも、違いも理解できたにはできた。
ただ、話を聞いてるとここは本当に現実なのかどうかわからなくなってくる。

「わ……かりました。ありがとうございます。ところで、魔法陣ってどう描くんですか?」

「なんだ、その紙に描いてないのか?」

「はい」

「――そうか。ん。きっと陣の形はあれでいいだろう…ちょっと待ってろ」

ぶつぶつ独り言を言い出したと思ったら、ポケットから紙とペンを取り出してなにやら描き始めた。
あまりに集中して描いてるものだから、どうにも話しかけられない。

「――ほら、これだ」

と、紙を渡してくるまでにかかった時間は約五分。

「あ、ありがとうござ……うわぁ」

渡された紙に描かれてある絵を見て、思わず顔がひきつった。
そこの描かれていたのは、五分で描いたとは思えないほどの複雑な魔法陣。
これをこんな短時間で描くなんて、描き慣れてるとかいうレベルじゃないだろ。

「これ、礼子さんが描いてはくれないんですか?」

「甘えるな」

……これは、描き終えるまでにどのくらい時間がかかるのか想像できない。
深いため息と一緒に、体の力が抜けていった。



「どうだ上崎。描けたか?」

椅子に座って、のんびりとコーヒーを飲みながら礼子さんが聞いてくる。
イラッときたのは死んでも口には出さない。

「…はい、なんとか」

胸元の部分に小さい陣を描いた人形と、店の床に大きく描いた陣を見比べる。
時間はすごくかかったけど、うまく描けたと思う。

「なんだ、人形に描く陣、そんなとこに描いたのか」

「――え? だって、紙にはここに描くって……」

「それは一例の話だ。別にどこだっていいんだぞ?…どこだってな」

そう言いながら、口元を押さえてふふふと笑い始めた。

「なんだよ…、じゃあ腕とかに描けばよかった」

人形に描いた陣を見て、ため息をつく。
これじゃ、俺が変態みたいじゃないか。

「――変態」

「なっ!? ちがいます!」

思ってることをそのまんま言われた。
俺の反応を見て、礼子さんは堪え切れなくなったのか、大声で笑い始めた。
耳が赤くなってるんだろうなぁってのが、自分でもわかるくらいに恥ずかしい。
うわ、何これものすごく恥ずかしい。
そして、悔しい。

「勘弁してくださいよ…。次に取り掛かりますよ」

「あぁ、わかったわかった」

と言いつつも、まだ少し笑っている。
結構、笑い上戸なんだな。

「っと、次は……“魔法陣の上に人形を寝かせて、人形に描いた陣の上に手を置いて、呪文詠唱”だそうです」

「――変態」

「だから違いますって!!」

再び礼子さんは大声で笑い始めた。
お願いです。頼みます。勘弁してください。

「――と、まぁ、冗談はここまでにしてだな。…書いてあるのはそれだけか?」

ふと、急に冷静な顔に戻って話しかけてきた。
切り替えが早すぎる。

「えっと“詠唱後に激痛が来るが、手を離してはならない。話せば術者が人形のようになる”だそうです」

「人形ねぇ…。つまり、入れ替わるのか。まぁ、大丈夫だろう」

「はい」

大丈夫の根拠は? まぁ、俺が激痛に耐えればいいのか。
…耐えられるだろうか。
やってみないと、わからない……か。

覚悟を決めて、人形を陣の中心にまで運ぶ。
人形はとても軽い。

「さ、お前の魔法を私に見せてくれ上崎」

腕を組みながら礼子さんがそう言う。
俺は軽くうなずいてその場に座り、人形の胸元に手を置いた。
そして、大きく息を吸い込んだ。
……詠唱を始める。

「――さぁ、目覚めよ空の器」
「――さぁ、術者の魔力で満たされよ」
「――さぁ、眠り続ける理由はもう何も無い」
「――さぁ、その瞳に術者の姿を映せ」
「――さぁ、今が目覚めのときだ!!」

直後、前が見えなくなるくらいの異常な光が俺を包み込み、異常な激痛が俺の全身を駆け巡った。

「っああああああああああっ!!」

「上崎っ!!」

激痛と光の中で、かすかに礼子さんの声が聞こえた。
でも、返事ができない。
喉が詰まる。
体中を鉄パイプで貫かれ続けているような痛み。
どうしようもない絶望感が体を包み込み、何も考えられなくなる。
できるのは、痛みに耐えながら叫ぶことぐらいだった。

「うっうああ………っあああ!!」

「上崎!! しっかりしろ上崎!! 手は絶対に離すんじゃないぞ!」

手…? あぁ、そうか。
この手を人形からどかせば、俺はこの痛みから解放されるんだ。
そうだ、手を…手を離せばいい。
こんなの…勘弁してほしい。
俺は……。

「離さねぇぇっ!! 絶対…っ、絶対離さねぇっ!!」

そうだ。
離してはいけない。
ここで離せば俺は人形になってしまう。
それだけは絶対にいやだ。
俺は……友達を作るんだ!!

瞬間、全身を包んでいた光がはじけ飛んだ。
はじけ飛んだ光は、小さな光る粉になって俺と人形に降りかかってくる。
そして、体から激痛が徐々に消えていった。
あぁ、終わった。
そう思った瞬間、体から力が抜けていった。
視界がぐらぐらと揺れ始め、座っていることすら辛くなる。
意識が段々と遠のいていく。
これは……ダメだ。

「手を…手を胸からどけてもらえますか?」

完全に気を失う直前、そんなセリフが聞こえた。



「おい、おい上崎」

誰かが俺を呼んでる。
この声は礼子さんかな。
そうか、あの後気を失って倒れたのか…。

「おい上崎! 起きろって!」

礼子さん、いいじゃないですか。
もう少しだけ寝させてください。

「――あ…あの、上崎…さん? 起きてください……」

…え、誰?

「上崎さん…起きてくださいお願いします…」

誰の声?
そう思いながらゆっくりと目を開ける。
ぼんやりとした視界の中に、誰かがいるのがわかった。
俺の顔を覗き込んでいる。
段々と視界が元に戻っていく。
銀色の長い髪。
フードみたいな被り物。
どこかで見たことあるような――。

「ま、さか…?」

そう言いながら上半身だけを起こすと、彼女はあわてて顔を引っ込めた。

「お、起きたか上崎」

俺の隣に座っていた礼子さんが安心そうな表情をした。 

「礼子さん…彼女は?」

「ふふ…ふふふ……。まさかな、驚いたぞ私は」

「そっか。…成功、したんですね?」

成功という単語に彼女が反応してこちらを見る。
そして俺と目が合うと、とてもやさしい笑顔を向けてきた。
思わずどう反応すればいいかわからず、固まってしまった。

「あぁ。大成功だ。本当に、私は驚いている。…お前は、もう一度魔法をよみがえらせたんだからな」

成功。
そう、つまり。
俺の目の前にいる彼女は、俺が魔法で息を吹き込んだ“元人形”。
けど、見た目はどう見ても普通に人と変わらない。
それに、魔法が成功したっていう実感がわかない。

「あの…上崎さん」

「あ、はい? なんでしょう?」

思わず敬語になってしまった。

「あの…私、いつも上崎さんと礼子さんの会話を聞いて、いつか自分も会話に混じれたらなぁって思ってました」

「は、はぁ……」

「だから、今、上崎さんが魔法をかけてくれて、本当に感謝しています。だって、こうして話すことができるんだ

から。ありがとうございます」

座ったまま深く頭を下げてくる彼女。
あれ、なんでお礼言われてんだっけ?
えっと、えっと?

「あ、いや、あの、うん。こちらこそ、ありが…とう?」

途中から、礼子さんのほうに向かって言ってしまった。

「なぜ私にお礼を言う」

ごもっとも。

「いや、でも、あの、感謝してるのは本当…ですし、陣だって描いてくれましたし…」

「まぁ、そう、だな。うん」

なんか、ぐっだぐだ。
そのぐっだぐだな俺を見て、彼女は楽しそうに笑っていた。
その笑顔を見て、焦っていたのがなんとなく落ち着いていく。
そうか、彼女、もう笑えるんだよな。
感情を表情に出すことができるんだよな。

「おい上崎。こんなことより、彼女に言うことがあるんじゃないのか?」

「そうでした」

そう。
言わなくちゃならないこと。
彼女に息を吹き込んだ理由。

「あの…」

「はい?」

「えっと、あーー」

思わず礼子さんのほうに視線を送って助けを求める。
けれど、非情にも礼子さんは目を閉じて無視をした。

「どうしました? 上崎さん?」

言いたいことが言えずに、もごもごしている俺に彼女が追撃してくる。
その追撃のせいで、よりもっともごもごし始める。
だめだ、覚悟を決めて言わないと。
とても簡単なセリフじゃないか。

「その、えっと……俺と…」

「…上崎さんと?」

やめろ、そんな純粋な目で俺を見ないでくれ。

「と…とも……」

そこまで言うと、彼女はクスクスと笑い始めた。
口元を手で隠しながら上品に。
あれ、礼子さんも同じように笑うけど、全然上品に感じなかったぞ?

「じゃあ、私から言いますね」

「はい?」

「――私と、お友達になってください」

それは、一瞬の爆撃。
例えるなら、気づいたら核の発射ボタンを押されていたような感じ。
それは俺のセリフです。
俺が言いたかったセリフなんですよう。

「えっと、あの、うん。俺でよければ…」

そう言うと、彼女は合わせた両手を口元に持っていき、うれしそうな表情をしながら頭を少し傾けた。
綺麗な銀色の長い髪がさらさらとゆれる。
その表情はとても純粋にうれしそうな表情で、一瞬ドキっとしてしまう。
正直、反則レベル。

「上崎さん。じゃあ、どこか色々連れて行ってくださいね? 
私、いつも色んなお客さんの話を聞いていて、なんだろうなー、知りたいなーって思うことがたくさんあったんで

す。だから、ね?」

「お、おう。任せてください?」

「本当ですか? やった、やった」

キャッキャとうれしそうに騒ぐ彼女。
つか、外に連れて行ったら人形だってバレない?

「お前が今思っていること、多分大丈夫だから安心しろ上崎。お前の魔法は超上出来だ。素人が見たところで、彼

女が“元人形”だと気づくことはまず無いだろう。…しかし、なぜいきなりここまで完成度の高い魔法に仕上がっ

たのか……」

「そう、ですか。じゃあ、バレないのか。……そんなに完成度高いんですか?」

ふと、彼女のほうを見る。
首を軽くかしげながら、興味深そうに俺と礼子さんの話を聞いていた。

「異常にな。だって、もう、あれは外見は人間にしか見えないぞ。…ほんと、いったいどうなってるんだ…」

「外見は…か」

外見だけは人間みたいな、動く人形。
でも、中身は空っぽ。
人形であって、人形じゃない。
なんだか、よくわからなくなってきた。

「ま、とりあえず、彼女に名前をつけてやらんとな」

「名前ですか」

「ああ、そうだ」

礼子さんと二人で彼女のほうを見る。

「おい。お前、何かつけてほしい名前とかあるか?」

「あ、えっと、名前……どうでしょう。名前なんて付けてもらったことが無いので、わからないです。ごめんなさ

い…」

「あぁ、いや、別に謝ることでもないが…」

急に謝られて反応に困った礼子さんは、腕を組んだまま黙り込んでしまった。
そして、ちらりと俺のほうに視線を向ける。
助け舟をよこせということか?
俺のときは無視したくせに…。

「フレン……」

ぼそっとつぶやく。
それを礼子さんは聞き逃さなかった。

「ほう、フレンか。ふむ、フレン。いい名前じゃないか」

「あ、いや、その、ありがとうございます。…っと、どうかなフレンって…」

弱弱しい声で彼女に尋ねてみる。

「フレンですか。いいですね、すっごくいいです。私、その名前気に入りました」

「よし、じゃあ、お前は今この瞬間から“フレン”だ。ちなみに、知っていると思うが、私の名前は金上礼子だ。

改めて、よろしくな」

腰に手を当て、人当たりの良い笑顔をフレンに向ける礼子さん。
俺もこの流れに乗って自己紹介することにする。

「俺は上崎。上崎遠也。改めて、よろしく」

礼子さんみたいな笑顔を作ることはできないけど、そのかわり、手を差し出す。
握手。
フレンは伸ばされた俺の手を見て、一瞬どうすればいいのかわからないようで困っていた。
けど、礼子さんに促されてフレンも手を伸ばした。
伸ばされた手を迎えに行って、そっと握る。

「上崎さん。これから、よろしくお願いしますね」

再び、殺人効果を持った笑顔。
俺はまた固まってしまった。
固まったまま、その笑顔を見つめ続けた……。



ひそひそと、誰かの話し声が聞こえて、周囲から大勢の視線を感じる。
きっと、昨日俺が学校を飛び出したからだろう。
…でも、不思議なことに気にならなかった。
だって、この時間が終われば俺は会えるから。
俺の、たった一人の友人に会うことができるから。
だから、この時間は苦でもなんでもなかった。
見たいなら好きなだけ見ればいい。
勝手に、色々噂してればいい。
もう、お前らなんかどうでもいいんだから。

「おはよー」

不意に聞こえるあの声。
友瀬の声。
思わず、本を読み進める手が止まった。
友瀬の声は相変わらず明るい声。
落ち込んでいる様子も何も感じなかった。
ってことは、昨日のことはなんとも思っていないのだろう。
…でも、少しだけ気になって友瀬のほうをちらっとだけ見た。
瞬間。
友瀬も俺のほうを見ていて、目が合った。
あわてて目をそらして本を見つめる。
目をそらす瞬間、友瀬が悲しそうな表情をした気がした。
そう。
多分、気がしただけ。
友瀬がそんな表情をするはずが無い。
俺は一方的にそう思って、再び本を読むことに集中した…。




放課後、誰よりも早く学校を飛び出して向かったのは、他のどこでもない。
礼子さんの店。
できたばかりの友達がいる場所。
俺が一番楽しいと感じられる場所。
店の前で深呼吸して、ドアをゆっくりと開く。

「いらっしゃいませ…あっ! 上崎さん!」

入ってすぐに、フレンのうれしそうな声が飛んできた。

「おー、上崎か。コーヒーいるか?」

続いて、礼子さんのいつものセリフ。
「ブラックでおねがいします」と伝えて、俺はイスに座った。

「ね、ね! 上崎さん!」

フレンが俺の向かい側に座って、話しかけてきた。
…魔法をかける前は、動かないフレンが向かい側に座っていた。
でも、今は元気に動き回って、楽しそうに話しかけてくる。
不思議な気分だった。

「何?」

「“テレビ”ってすごいですねっ。聞いたことはあったけど、こんなにすごいとは知りませんでした」

「え? あぁ、そっか。フレンはテレビを見るの初めてだっけ」

「はい。お客さんの話で聞いてはいたけど、実物を見るのは初めてです。…あれも魔法ですか?」

「いやいや、違う違う」

そっか、フレンにとってはこの世界は知らないものであふれかえってるんだもんな。
テレビを魔法だと思うのも無理ないか。
まぁ実際、魔法みたいにすごいものだしな。

「ほら、コーヒーできたぞ」

店の奥から礼子さんが出てきた。
両手で持っているトレイの上には、コップが三つ。
俺と、礼子さんのと、そして……フレンの分。

「あ、ありがとうございます」

湯気の上るコップを受け取って、一口飲んでからテーブルの上においた。
フレンも同じようにコップを受け取るけど、中身を見て戸惑っている。

「どうした、フレン。上崎みたいに飲めばいいだろう」

「でも…私人形だから…飲んでも大丈夫なのかなーって思いまして…」

あ、なるほど確かに。

「そんなもん、大丈夫に決まってるだろう? お前の体の中には臓器の変わりに魔力が詰まってるんだから。その

魔力がどうにかしてくれるだろ。…多分な」

大丈夫の根拠が「魔力がどうにかしてくれる」って。
適当にもほどがあるだろ。

「わ…かりました。飲んでみます!」

「え! 飲むの!?」

思わず大きな声でそう言うと、フレンが一瞬びくっとして俺を見た。

「大丈夫だと思いますよ…多分」

と、不安そうな笑顔で言って、コップの中身をまじまじと見つめる。
そして、覚悟を決めたのかコップを口元に持っていき、中身を飲み始めた。
それも、一気に。
あの、熱そうなコーヒーを一気飲み。

「あ、あぁああ」

「おいおいおいおい…」

俺と礼子さんの不安そうな声が口から漏れる。
ちらりと礼子さんの顔を見ると、口元がものすごく引きつっていた。

「……ふぅ…」

中身を飲み終えたフレンが、コップをゆっくりとテーブルの上に置いた。
そのまま、目を閉じて黙り込んでしまった。
話しかけていいものかどうなのかわからず、礼子さんとあたふたする。

「おいし…かったです」

目を開けたフレンは、ゆっくりとそう口に出した。
そして、なんだか名残惜しそうにコップを見つめている。

「な、なんともない? 大丈夫?」

そうフレンに聞くと、ゆっくりと首を縦に振った。
そして、うれしそうな笑顔。

「…ほう。これは興味深いな……」

フレンを見ながら、礼子さんが腕を組む。
礼子さん。大丈夫って言ったのはあなたですよ?
でも、たしかに興味深かった。
果たして、コーヒーはどこに吸収されたのだろう。
つか、熱くなかったの?

「魔力が吸収したんですか…ね」

「さぁ…私もわからん。適当に、魔力がどうにかしてくれるって言ったんだが、まさか本当にどうにかなるとはな

……」 

「え?」

「ん?」

礼子さんの発言に、思わず俺とフレンが礼子さんを見たまま固まる。
やっぱり、この人は根拠も無しに大丈夫だと言っていたんだ。

「っていうか、フレン」

「はい? なんですか上崎さん」

「コーヒー、熱くなかったの?」

「あ、だって、私人形だから熱いとか寒いとか痛いとかは感じないんです」

「あ、なるほど。そっかそっか」

納得した俺の隣で、礼子さんが首をかしげた。

「でも、さっき“おいしかった”って言っただろ」

確かに、礼子さんの言うとおりだ。

「あ、いや、その。なんだか、飲んだ直後に不思議な気分になって、口の中が表現しにくい感じになってて、そし

たら“おいしい”っていう単語が
頭の中に浮かんできたんです。…だから、これはおいしいって表現するのかなーって思って、そう言ったんです」

「なるほど。…と言うことは、フレンの“おいしい”は私たちのおいしいとは少し違うのか。味で“おいしい”と

感じるのではなくて、気分で“おいしい”を感じる…。むぅ、本当に興味深いな…」

礼子さんとフレンの言っていることがさっぱりわからない。
特に、礼子さんなんて、教えてもくれずに一人で満足しているし。

「…つまり、味覚は無いけど、“おいしい”って思うような気分になるっていうこと?」

「はい。簡単に言うとそうなります」

フレンは、自分にとっての“おいしい”の意味を理解してもらえてうれしかったのか、満足そうな表情を浮かべた


なんだか、よくわからないけど、おいしいって思えるなら、まぁいいか。

「コーヒー、好きになれそう?」

「はい。もう、好きになりましたよ」

えへへ、と笑いながらフレンがそう言う。

「そっか、良かった」

これから、俺と礼子さんとフレンの三人で楽しくやっていける。
そんな気がした。

「あ、そうだ上崎」

「はい?」

「明日日曜だから学校休みだろう?」

「そうですけど…?」

「フレンを外に連れて行ってやってくれ」

「――はい?」

明日が一気に不安になった。



今日は日曜日。
学校は休み。
いつもなら家でゆっくりと本を読んだり、だらだらと過ごす。
けど、今回はそうもいかない。
重大なイベントがあるからだ。

フレンを外に連れて行く。

第三者が聞けば、ただ遊びに行くだけ。
けど、実際はちがう。
俺は、動く人形を外に連れ出して、色々見せてやらないといけないのだ。
それも、人形だとバレてしまわないように。
礼子さんは簡単にはバレないって言ってたけど、本当に大丈夫だろうか。



「おはようございますー」

そう言いながら店のドアを開けて中に入る。

「お、来たか来たかー。おはようさん、上崎」

店内にはニヤニヤとした礼子さん一人だけだった。
フレンはどこに行ったのだろう。

「あれ? フレンはどうしたんですか?」

「さぁなー」

といいつつ、チラチラと奥を見ている。
相変わらずニヤニヤとしながら。

「さぁなって……」

「礼子さんー。この格好、変じゃないですか――」

突然、店の奥からフレンが出てきた。

「あ、フレン――」

「わわわあわっ上崎さん! ちょ、ちょっと待っててください」

と、異常にテンパリながら再び店の奥に戻っていった。
…服装がなんか前と違ったんですけど?

「礼子さん、あれって?」

「あれもこれもどれもないだろう。フレンだ」

「いや、そんなの見たわかりますけど。なんか、服が…」

「なんだ、やらしい目つきをしやがって」

俺そんな目つきをしてたのか。

「そんな目はしてません!」

「まぁまぁ。あの服はな、私のおさがりだ」

え、おさがり? あの可愛らしい感じの服を礼子さんが着てたの?
なんか礼子さんらしくない服だったけど。

「上崎。お前の思っていることが手に取るようにわかるぞ? んー?」

「いや、あの、えと、ごめんなさい」

「ほう? 謝るようなことを思っていたんだな?」

しまった。

「いや、その――」

「――上崎さん! お待たせしました!」

すっごくいいタイミングで、フレンが奥から出てきた。
俺を攻めるタイミングを奪われて、礼子さんが不機嫌そうに腕を組んでいる。
ちょいちょい思っていたけど、礼子さんはやっぱりSだ。

「フレンー、タイミングが悪いぞー」
 
腕を組んだまま、不機嫌そうにそう言う礼子さん。
いや、フレンは何も悪くない気がします。

「えと、あ、ごめんなさい…」

「謝らなくてもいいと思うよ、フレン。礼子さんは俺をいじれなくて不機嫌になっただけだから」

「そう、ですか。なら、いいです」

礼子さんが驚いた表情をしていた。

「それより…上崎さん」

「ん?」

「…似合ってますか? あ、ごめんなさい、変ですよね。着替えてきます!」

「待て待て待て、まだ何も言ってないだろ」

「あ、ごめんなさい」

「…えと、その、似合って…るよ。すごく」

自分で言って、顔が赤くなっているのがわかった。
こんなこと、面と向かって誰かに言うのは多分はじめてだ。
というより、今までこんな状況になったことが無い。

「あ……ありがとうございます」

フレンの顔も赤くなっているように感じた。
…恥ずかしいのか?
そりゃそうか。

「お前ら何やってんだ。見ていてむずがゆいぞ」

嫉妬したのかなんなのかわからないけど、礼子さんが間に割り込んできた。
そして、そのまま「はいはいはい」と言いながら俺とフレンの背中を押してくる。

「ちょ、礼子さん押さないでくださいよ」

「がたがた言うなー。お前らはさっさとデートしてこい」

「で、デート!?」

「あー、もう反応しなくていいから行ってこい!!」

ドアを開けた礼子さんによって、そのまま店の外に押し出されてしまった。
外は家を出たときと変わらず良い天気で、出かけるには絶好の日だ。

「じゃあ……まぁ、行こうか」

「そう…ですね。行きましょう」

フレンがうなずいたのを合図に歩き始める。
俺に付き添うように、フレンもゆっくりと歩き始めた。
…さて、どこに行こうか……。



「お、おー、これはなんですかっ!? なんですかっ?」

と、目の前のクレーンゲームを指差してはしゃぐフレン。
そのままガラスに顔を押し付けて、中の商品をほしそうに眺め始めた。

「これは、お金を入れて中の物をとるんだよ」

そう言って、百円を入れてクレーンを動かして、近くのぬいぐるみをつかみ上げる。
「おおおお」と、隣でフレンがうれしそうな声を上げた。

「…よし、このままこのまま…」

ゆっくりと動かして、そのまま取り出し口に続く穴に落とした。
ストン、と軽い音がしてぬいぐるみが落ちてくる。

「よし。…はい、これ」

「え…?」

「いいよ。あげる。フレンのためにとったんだからさ」

「くれるんですか? あ、ありがとうございます!」

ぬいぐるみを受け取ると、うれしそうに目を細めてぎゅっと抱きしめた。
どうやら、心から喜んでくれているみたいで良かった。

「ん。よかった」

しかし、これでいいんだろうか。
フレンに外の世界を教えるつもりだったのに、どこに連れて行けばいいのかわからなくて、結局ゲームセンターな

んていう微妙なところに来ている。
いや、いいわけないな。
ちゃんと、もっと良いところに連れて行ってあげないと。
…どこだろう。
ここで、ふと気づいた。
考え込んでいるうちにフレンがいなくなっている。
あ、これはやばい。

「お、おいっ! フレン!?」

かなりテンパって辺りを見回す。
今日のフレンは普通の人みたいな服装をしているから、余計に見つからない。
右見て左見て前見て後ろ見て上見て下見て。
いや、下はいねぇよ。
瞬間、視界の端にフレンの姿を捉えた。

「フレン!!」

思わず叫んで近寄る。
隣を行く通行人の何人かが俺のほうに振り向いた。
けど、そんなものは気にせずに、まっすぐフレンに向かって走っていく。

「あ、上崎さん」

フレンも俺に気づいたようで、こっちをむいて手を振っていた。

「…フレン。急に黙って離れないでくれよ。焦る」

「あ、ごめんなさい。…でも、これがどうしても気になって…」

フレンが差し出した右手に握られているもの。
チラシ。
近所の水族館のチラシだった。
可愛いイルカのイラストとかが描かれている。

「あぁ、これな。…これがどうかした?」

聞くまでも無くチラシを見せてきた理由なんてわかるけど、一応聞いてみる。
からかい半分まじめ半分。

「えっと…これ、なんですか?」

あ、そこからか。

「これは水族館って言って、水の中を泳ぐ動物たちが集まっているんだ」

「おー! これが水族館だったんですね……」

そう言ったきり、黙って俺のほうを見つめてきた。
まぁ、うん。いいかな。

「…行きたいの?」

「あ、えっと、上崎さんがいいなら…行ってみたいです」

よしよしよし。
自分でどこに行くか考える手間が省けた。
それに、フレンが行きたがってるならこれが一番だ。

「いいよ、うん。じゃあ、行こう」

「え?」

「ん? どうした? 行こう」

「あ、はい! ありがとうございますっ!」

明るい声で返事をして、フレンが俺の隣に並ぶ。
肩が当たりそうなくらい近くに。
……これは人形人形人形。
……俺は友達友達友達。
おかしくなってしまいそうだ。



近所で最近オープンした、わりと大きな水族館。
イルカのショーとかが人気あるらしく、親子連れやカップルが多く訪れていた。

「おー! あれがイルカですか!」

その水族館に、俺とフレンは来ていた。

「ん、まぁ、イルカだね」

フレンは、水槽のガラスに顔を押し付けて、楽しそうに中を見ている。
俺はそんなフレンを隣でみている感じ。
改めて思うけど、本当にフレンが普通の女の子に見えてくる。
人間に見えてしまう。
人形だなんて、言われても多分わからないだろう。

「私、好きになりました」

「え、え?」

「イルカのこと。とっても可愛いんですもん」

「あ、あぁ、イルカのことね…」

なんで一瞬ドキってしてんだよ俺。
相手は友達だぞ。
それ以前に人形だ。

「そういえば、今日はイルカのショーがあるらしいよ?」

「ショー?」

「そう、ショー。イルカたちが芸をしたりするんだ」

イルカが好きになったなら、これを見たらきっと喜ぶだろうな。
…少し、俺も見たいし。

「行きましょう!」

即答だった。

「え、あ、うん。…えっと、場所は…」

来る前にフレンに渡されたチラシを見て会場までの行き方を調べる。
どうやら、すぐそこみたいだ。

「あっちだ、行こうフレン」

「はい。行きましょう」

それにしてもフレン、本当に楽しそうな表情してるなぁ。
礼子さんの店でしゃべってる時以上かもしれない。



「おー! わ、わわ…!」
 
水上を飛び跳ねるイルカを見て、フレンが興奮してはしゃぐ。
俺もそんなフレンの隣に座って、ショーを見ていた。

「しかし、すごいな。あんな高く吊られた輪でもくぐれるのか…」

「ね! ね! すごいですね!! イルカすごいです」

声は俺に向けていても、視線はショーのイルカに釘付け。
よほど楽しいらしい。

「あのイルカたちは、ずっとここで暮らしているんですか?」

唐突に、視線をイルカに向けたまま、フレンが俺に尋ねてくる。
ずっとここで?

「そう…なるのかな。まぁ、不自由な生活じゃないと思うけど」

「でも、自由でもなさそうですね。私、イルカは海にいるものってお客さんから聞いてました。…でも、このイル

カたちはずっとここにいるんでしょう? …なんだか、不思議です」

イルカを見て、楽しそうにしていたフレンの表情が急に曇り始める。
あれ、なんでそんな悲しそうな表情をするんだ?
フレンには、そんな表情はしてほしくない。

「まぁ…なんというか…」

言葉が見つからない。
どう返事して良いのかわからない。

「あの子達は、ここで楽しいんでしょうか?」

視線は、イルカから離すことなくしゃべるフレン。

「…まぁ、楽しいんだと思うよ…」

そんな言葉しか返せなかった…。

「なら、良かったです」

そういって、視線をようやく俺に向ける。
その表情は曇り一つない笑顔。
俺の言葉を信じて、その笑顔。
直視は……できなかった…。



水族館から数時間後。
すっかり暗くなった町の中を俺たちは歩いていた。

「水族館、楽しかったですね」

俺の隣でゆっくりと並んで歩くフレンが、イルカのぬいぐるみを抱きしめながらそう言う。
ぬいぐるみは、俺が買ってあげたものだ。

「まぁ、そうだね」

「……上崎さんは楽しくなかったんですか?」

不思議そうな表情を俺に向けてくる。

「いや、楽しくはなかったけど…色々、考えさせられたよ」

「…? どういうことです?」

「いや、まぁ、いいよ」

「そう…ですか」

それっきり、フレンは黙り込んでしまう。
…ん、俺はバカか。
フレンは楽しい気持ちで話しかけてきたのに、なんで俺は暗くさせてしまってんだよ。

「…ごめん、なんか暗くなっちゃったね」

ははは、と笑いながら謝る。
俺の顔はうまく笑えていますか?

「大丈夫ですよ。…それより、なんか疲れちゃいましたね――」

「ん? …まぁ、言われてみれば」

ふと道の先を見ると、小さな公園があるのが見えた。
遊具が二、三個、ベンチが一つだけの小さな公園だ。

「あそこで少し休憩してから帰ろうか」

そう言って、公園を指差す。

「そうですねっ!」

そう言って、フレンが先に一人走り出した。

「あ、ちょ! フレン!?」

「あははっ、追いてっちゃいますよ!」

楽しそうに笑いながらそう言って走るフレン。
全速力、というわけではない。
歩きより、少し速いぐらい。

「…はは、はぁ…」

俺は小さく溜息を付いた後、苦笑いを浮かべながらゆっくりとフレンの後を追いかけた。



「うわ、さすがにベンチが冷たいな…」

公園にあったベンチに座ると、季節のせいで冷たくなっていた。
それでも、疲れているせいか立ち上がる気にはなれない。

「そうですか?」

ベンチを手で触りながらフレンが隣に座る。
いいな、人形は温度を感じないから。

「いいな、フレンは温度を感じないから」

思ったことをそのまま言ってみる。

「感じないってのも、なんだか寂しいですよ…」

フレンが苦笑いをする。

「なんで?」

「今日、イルカのショーを見たじゃないですか」

「うん」

「そのとき、水しぶきが飛んできたんです」

「へぇ…?」

「他のお客さんは『冷たい』って言って喜んでましたけど、私にはその『冷たい』がわからなくて一緒に喜べませ

んでした」

「あー…なるほど…」

隣で少し悲しそうな表情をするフレンに、どう話しかけていいかわからず無言になる。

「ま、でもそんなのいいんですよっ。 温度を感じなくたって、十分に楽しめましたから!」

無言になった俺に気を使ったのか、フレンは明るく振舞う。

「そっか…。まぁ、フレンが楽しんでくれたなら十分だよ」

俺も笑顔でそう答えた。
フレンが明るくしようとしているのに、ここで暗くさせる必要はない。

「はい。楽しかったですよ。今日はありがとうございました」

フレンの笑顔が、公園の街灯に照らされる。
穢れを知らない、純粋無垢な笑顔。
そんな笑顔を、まっすぐに俺に向けてくる。
胸の鼓動が一瞬だけ高まる。
それは、なんでなのか。
今は正確な答えを出す勇気がない…。

「まぁ、お礼を言われるほどのことじゃないよ」

フレンから視線をそらして、自分の足元を見る。

「いえ、本当に感謝しています。…前にも言いましたけど、私をこんなふうにしてくれたことも含めて」

「それは…俺が友達がほしかったからこうしたわけで…」

「私だって、友達がほしかったんですよ。それに、話を聞いてばかりいるのは飽きていましたし」

「まぁ、内心少しは戸惑いましたけどね」

苦笑しながらそう話す。
そのまま大きく溜息をすると、立ち上がって公園内を歩き始めた。

「暗いから危ないよ?」

「上崎さんがそこで見ててくれたら大丈夫ですっ」

「そう…かな」

「そうですよ」

フレンが一歩一歩、公園内をゆっくりと踏みしめるように歩く。
それを俺はベンチに座ってぼんやりと眺めていた。

「上崎さん」

「ん?」

「“遠也さん”って呼んでも良いですか?」

「え? あ、えっと…うん」

突然の提案に戸惑いながらもそう返事する。

「ありがとうございますっ」

それだけ言って、フレンは何事もなかったように再びゆっくりと歩き始めた。
遠也。
遠也……。
親しい人に、名前でそう呼ばれる。
それだけでも、すごくうれしかった。

「あの、遠也さん!」

「ん? どうしたの?」

「これからも、仲良くしてくださいねっ!」

もちろん、俺の答えは言うまでもなかった。
けど、言わないと伝わらない。

「もちろん…。こっちこそ、よろしく」

「よろしくですっ」

こんな楽しい時間が、いつまでも続けばいい。
いつまでも、いつまでも続けばいい。
本気で、そう思う…。



チャイムの音で目を覚ます。
周りの生徒は、一部は購買へと向かい、他は弁当を机の上に広げ始めていた。
そうか、もう昼か。
いつの間に寝ていたんだろうか。
俺もさっさと購買でなんか買って食べよう。
そう思い、立ち上がったときだった。

「上崎…」

と、後ろから誰かの呼ぶ声。
聞き覚えのある声。
話したくない声。
友瀬光。

「…なに?」

無愛想な返事をして、友瀬のほうを見る。
友瀬の表情はとても苦しそうな表情をしていた。
は? なんでお前がそんな表情をする必要があるんだよ。

「いや…あのさ、ちょっと話さない?」

「却下」

そう吐き捨てるように言って、廊下に向かって歩き出す。

「あ、え? ちょ、待てよ!」

その声が合図のように廊下を走り抜ける。
もう、友瀬の声は聞こえなかった。



「ま、こんなもんか…」

手に持ったパンを見て一言。
購買に行くのが遅過ぎた。
人気のあるパンや惣菜パンは全て売り切れていて、残っていたのは俗に言うコッペパンだけだった。
よって、今手に持っているのはコッペパン。
味気の無い憎いやつだ。
ちなみに、飲み物は牛乳。
飲み物にはとくにこだわりが無いからこれで十分。
さて、屋上で食べよう。
どうして誰も起こしてくれなかったのかとか、それ以前に友達がいないなとか、色々考えてるうちに気が付けば屋

上にでる扉の前に来ていた。
後ろを見ても、誰も来る気配は無い。
まぁ、こんな季節に屋上に来る人はいないだろう。
重い鉄の扉をゆっくりと開ける。
錆付いているせいか、嫌な音がする。

「――なんで、お前がいるんだよ…友瀬」

屋上に出て、真っ先に視界に入ってきた人物。
友瀬だ。
フェンスにもたれかかって俺を見ている。

「上崎を待ってたんだよ」

そう言って、手に持っていたものをこちらに投げる。
若干戸惑いながら受け取ると、それは焼きそばパンだった。
購買で人気ランキング一位のパン。
チャイムと同時に教室を出ても買えないといわれるほどのパンだ。

「何で俺…。つか、これ…」

「上崎にあげるよ。コッペパンじゃ寂しいだろ」

俺の手元を見て笑顔を浮かべる友瀬。

「余計なお世話――」

「俺さぁっー!」

文句を言おうとして、友瀬に遮られた。

「あのグループ抜けたんだわ」

「だからなんだよ。そんなの俺には関係ない」

「まぁ、聞けって」

「あいつらさ、上崎の陰口ばっか言うんだよ。やれオタクだの、やれキモイだの。ぶっちゃけウザくてさ」

「…は?」

「だからあの日、俺はあいつらに注意してたんだよ。そこにちょうど上崎が来ちゃってさ、まぁ、タイミングが悪

かったのかな」

「…なんだよ、また俺を騙すのか? そんなに俺を騙して楽しいかよっ!」

友瀬の話に腹が立って、大声で怒鳴りつける。
ふざけんな。
もう期待して騙されるのはこりごりだ。
もう、お前に騙されるのは嫌だ。

「ま、口で言っても信じてもらえないと思ってさ…」

そう言いながら友瀬が屋上の端を指差す。
その指差した方を見て、俺は言葉につまった。
何人かの男子生徒がボロボロになって倒れている。
顔に見覚えがある。
どれもこれも、あの日友瀬のそばにいた奴らだ。
俺の陰口を言っていた奴らだ。
それが全員倒れている。
え、どういうこと?

「ははは、ぶん殴っちゃった」

笑いながら言う友瀬をよく見ると、友瀬自身も相当ボロボロだ。
顔には生傷がついていて、服のあちこちは汚れて破けて…。
気づかなかった…。

「なんで…なんでそこまでやるんだよ」

「さぁ、なんでかな」

「理由もなしに友達をあんなにしたのか?」

「友達じゃねぇよ。あいつら、勝手に俺の周りにいただけ」

「は? 意味わかんねぇ」

「んー、まぁ、あいつらをあんなんにした理由は、友達の悪口を言われたからだよ」

重そうに腰を上げて、友瀬が俺のほうに近づいてくる。
片方の足を引きづりながら。

「友達…? 誰だよ…」

「――お前だよ、上崎…」

俺とすれ違いざま、そう言い残して友瀬は屋上から下りて行く。
カン、カン、という音をさせながら。
……え? 友達?
俺が?
……わけわかんねぇよ…。



放課後。
周りの生徒は鞄を持って次々に教室を出て行く。
俺もその中に混じって帰ろうしていた。

「おい、上崎」

背後から俺を呼ぶ声。
また友瀬だ。

「…なんだよ」

「一緒に帰ろうぜ。あと、本屋で上崎の読んでた本買おうぜ」

「却下」

「よし、行くか」

話を聞いちゃいない。

「ほら行くぞ?」

そう言って、勝手に俺の鞄を奪って走り出す。
全速力。

「おい! 待てよ!」

俺も全速力で追いかける。
鞄を奪われたままじゃ勝手に帰ろうにも帰れない。
でも、友瀬は思っていたよりも速くて追いつけない。
笑いながら前を走る友瀬を見て、他の生徒が驚きながら道を空けていく。
それを後から追いかける。
普段から走ることなんてないから、こういうときはキツイ。こんなことなら普段から走るなりなんなりして鍛えて

おけばよかった。
必死に走っても友瀬との距離は開くばかり。
途中で見失ったけど、下駄箱で友瀬の姿を発見した。
俺の鞄と自分の鞄を背負いながら外靴に履き替えている。

「おい…はぁ、はぁ、…友瀬っ!」

「うーん?」

俺に気がついたのか、ゆっくりとこちらを向く。
息、なんで切れてねぇんだよ。化け物か。

「うーん、じゃ、ねぇよっ!…っはぁ、うぅ…」

渇いた喉につばが張り付いて、吐きそうになる。それに加えて息もなかなか整わない。ぶっちゃけ死にそう。

「がんばってんなぁ、上崎」

直後、友瀬は笑顔を残して颯爽と校門まで走り去っていった。

「意味わかんねぇよ!! 鞄返せ!」

急いで靴を履き替えて、走って友瀬の背中を追いかける。
いち早く校門に着いた友瀬は、柵の部分にもたれかかりながら俺のほうを見ていた。
ニヤニヤしながら。
あー。
うざ。
もうめんどくさくなって、歩いて友瀬のほうに向かうことにした。
歩いたおかげで息も整った。

「俺、速いだろ?」

俺と向き合った友瀬の、開口一番のセリフ。

「…は?」

予想外のセリフに脳がフリーズ。

「んー、ま、いっか。ごめんな。ほら、鞄返す」

一人で納得しながら、鞄を俺に差し出してきた。
 
「え、あぁ…うん」

意外にあっけなく返されたので変に戸惑ってしまう。

「さ、帰ろうぜ上崎」

「ちょっと待て」

「うん?」

「俺と一緒に帰るために鞄を奪ってここまで走ってきたのか?」

「そうしないと、上崎、一緒に帰ってくれないだろ?」

「…あたりまえだろ。なんで俺がお前と帰るんだよ」

「よし――じゃあ行くか。まずは…本屋だな!」

「…話聞いてる?」

「何の話?」

「…わかった。もういい。行こう、本屋」

「お、やっと行ってくれる気になったか。よし、行こう!」

なんだ。
なんなんだよ。
意味わかんねぇよ。
俺の話もろくに聞かないくせに、俺と友達になりたいってなんだよ。
そもそも、何で俺となんだよ。  
意味わかんねぇよ…。



所狭しと本が並べられた古本屋の中、友瀬は黙々と本棚を見ていた。
どれもこれも古い本ばかりで、友瀬のイメージとははるかにかけ離れている。
ようするに、友瀬が読むとは思えない。

「なぁ上崎、お前が読んでた本ってこれだよな?」

目当ての本を探し出したようで、友瀬が本の表紙を俺に見せてくる。

「ん…まぁ、そうだけど」

「よし、じゃあ買ってくる」

そう言うと、ポケットから財布を取り出してまっすぐにレジへと向かっていった。
その友瀬の後姿を見ていて思う。
本屋に付き添うっていうだけだったし、このまま帰っても問題ないよなって。
だから――帰る。
友瀬に背を向けて本屋を出ようとする。

「――お、上崎。どこ行くんだよー?」

店を一歩出たところで背後から友瀬の声が聞こえた。振り向くとすぐ後ろに友瀬が立っていた。
あれ、早くね?

「いや、別に…」

「そう? あ、コンビに行こうぜ。腹減った」

ニヒヒ、と笑いながら友瀬が目の前のコンビニを指差す。どこに行ってもよく見かける有名チェーン店だ。
俺の返事を待たず、先にコンビにへ向かって歩いていく。

「…はぁ」

軽く溜息を吐いてその後をついて行った。
けど、俺は特に買うものが無いから入り口付近で友瀬を待つことにする。
…ここで帰ることもできるけど、どうせさっきみたいなタイミングで友瀬に捕まるんだからやめとこう。
――ふと端のほうを見ると、何人かの学生がたむろしていた。
周りにはお菓子の袋やらペットボトルやらが散乱していて、非常に汚い。
最悪だな…こいつら…。

「最悪だな…」

…あ、やっべ、声に出しちまった…。

「…なに、お前」

学生のうちの一人が立ち上がって俺をにらみつける。
まぁ、そりゃ自分たちのほうに向かって「最悪だな」なんて言われたら怒るだろうなぁ。

「お、何? どしたのケンちゃん」

「なになに?」

他の学生も立ち上がってぞろぞろと集まってくる。
通行人はちらりとこちらを見るだけで、助けてはくれない。
助けろよ。

「いやー、なんかさ、こいつが俺たちのほう見て最悪だなって言ったんだよ。うざくね?」

足がすくんで動けない。
手のひらは汗だらけ。
あー、なんでこういうときはいつもこうなるんだろう。

「い、いやさ、ごめんね? つい口にだしちゃってさ――」

「っるせぇ!」

ビクッ、と体が反応する。
目の前の学生はそのまま俺の胸倉をつかんできた。
相手の臭い息が顔にかかってキツイ…。

「息くせぇ…」

「な…、なんだとコラァッ!!」

あ、やっべ。
なんでつい口に出ちまうんだよ。

「いや、いや…?」

「歯ぁ食いしばれや!」

学生が右腕を振り上げる。
とっさにガードすることもできずに、目をつぶるしかなかった。
――けど、衝撃と痛みがやってこない。
おそるおそる目を開けると、目の前でこぶしが止まっていた。
――いや、止められていた。
学生の腕には蛇のように別の誰かの腕が噛み付いている。
視線を移すとその誰かとは友瀬。
左手にはコンビニの袋をぶら下げて、相手の学生をにらみつけている。
その表情は今まで見たことの無い表情。正直、怖いと思った。

「おい…お前…誰の友達に手ぇ出してんだ…?」

「んだぁ!? 誰だお前っ、離せ!!」

「はい、離した」

パッ、と友瀬が手を離すと、暴れていた学生はバランスを崩して盛大にしりもちをついた。

「上崎、大丈夫?」

そんな学生のことなど眼中に無いようで、心配そうに話しかけてきた。

「え、あ、うん。大丈夫だけど」

「ってめぇ…」

学生が悔しそうに立ち上がって、俺たちをにらみつけてくる。

「上崎、めんどくさいから逃げよう」

「…え?」

「ほら、行くぞっ!」

その一言を合図に友瀬が走り出した。

「あ、ちょ、待てよ!」

俺も急いで友瀬の後を追いかける。
もちろん、友瀬の後を追いかけるのは俺だけじゃなかった。

「逃げんなぁっ!!」

学生たちも後ろを追っかけてくる。
友瀬は足が速いからいいけど、俺は遅いんだよちくしょう!!

「あっははははは!!」

友瀬は何が楽しいのか、走りながら笑っている。俺は走るのだけで精一杯なのにあいつは笑ってやがる。
何がおもしろいんだよ!

「何笑ってんだコラァ!!」

学生が怒鳴る。
その気持ち、よくわかります……。



公園のベンチに座って、ぜぇぜぇと息をする。
さすがの友瀬も隣で辛そうにしていた
それもそうだろう。
学生たちは意外にもしつこかった。
走っても走っても追いかけてきて、死にそうなくらい走っても追いかけてきて、臨界点突破寸前でようやくあきら

めてくれた。

「うあー、だりいなぁ」

肩で息をしながら隣で友瀬が愚痴る。
だるいのはこっちのセリフだ。
学校で走らされ、外では命の危険すら感じつつ走らされ、こっちの体はボロボロだ。

「…そうだな」

無愛想に、そう返事をしておく。

「なんだよ、上崎。ご機嫌斜めか?」

「なっ――! 当たり前だろ!」

「そんな怒るなよー。さっきだって、俺がいなかったらお前殴られてたろ?」

「ん…まぁ、そうだけど…」

まさしくその通りなので言い返せない。
よくよく考えてみれば、外での件はほとんど俺のせいだ。
むしろ、友瀬には感謝するべきなのかもしれない。
かもというか、絶対そうだ。

「ま、いいじゃねーか。楽しいだろ? こういうの」

「こういうの? 楽しい?」

「放課後に友達と制服のまま寄り道して、トラブルに巻き込まれて、汗を流して…。なんか、青春っぽいじゃん」

だろ? と、友瀬は人当たりのいい笑顔を向けてくる。

「友達…」

「そ、友達。少なくとも、俺はお前のことを友達だと思ってるぞ?」

多分、友瀬は本気でそう言っている。
俺の悪口を言った奴らをぶん殴って、放課後には寄り道に俺を連れ出して――。
本当に友達だと思ってくれていないと、ここまでしないだろう。
だから、俺は友瀬の事を信じてもいいのかもしれない。
――けど、俺の中のめんどくさい部分がそうさせてくれない。
『また裏切られるぞ』と呼びかけてくる。
…でも。
でも…。

「俺も…友瀬のこと、友達だと思ってもいいのかな…」

「当たり前だろ? 聞くまでもねーよ」

すっと友瀬が右手を差し出してくる。
一瞬なんのことかわからなかったが、すぐに意味を理解して俺も右手を出して握り返す。
ぎゅっと、硬い握手。
なんだか昔の熱血ドラマを演じているようで気恥ずかしかった――。



「こんばんわ…」

ドアを開けて店内に入っていく。
店内は相変わらず怪しげな雰囲気に包まれている。

「おー上崎か。…お前、ほとんど毎日ここにくるなぁ」

イスに座って本を読んでいた礼子さんが目だけをこっちに向けてそう言う。
本のタイトルは見たことの無いで文字書かれて読めない。
どこか外国の本だろうか。

「あれ、フレンはどうしたんですか?」

店内をきょろきょろと見回すけれど、フレンの姿が見当たらない。

「あぁ、フレンは…捨てた――」

「――は? はぁぁああっ!?」

衝撃的なセリフに驚き、礼子さんに詰め寄る。
あまりのことに言葉を発せられないで口をパクパクとしていると、礼子さんがクククと笑い始めた。

「あっははは、冗談だ冗談。からかっただけだよ。面白い奴だなお前は」

「……礼子さん…」

「本気で捨てたと思っていたのか? 捨てるわけ無いだろう、あんな最高傑作を。第一、どこに捨てるんだ」

「…燃えるごみ?」

「バカかお前は。…まったく……。フレンなら店の奥で洗い物をしてもらっている。ここは私の家でもあるからな」

「洗い物って、フレンはメイドとかじゃないんですよ?」

「んー? なら、メイド服でも着せてみるか?」

一瞬、頭の中をメイド服のフレンがよぎる。
…いや、ありだけど色々とダメだ。

「どうした上崎。顔が赤いぞ? さてはお前、想像したんだろ?」

「バッ、な、いや、違いますよ!」

「おい……今、バカって言いかけなかったか?」

礼子さんの目つきが鋭くなって俺をにらみつける。
けど、口元は楽しそうにつりあがっている。

「いや、そんな――」

「あ、遠也さん!」

不意に名前を背後から呼ばれる。
聞きなれた、聞きたかった声。
振り向くと、後ろにはフレンが立っていた。
…振り向く瞬間、礼子さんから舌打ちが聞こえたけど気にしない。

「あ、うん。こんばんわ、フレン」

「はい、こんばんわ」

そう言って、嬉しそうにフレンが微笑む。
見せてくれる表情の多さに、フレンが人形だということを忘れそうになる。
外見が人とそっくりなせいもあるだろう。

「ほう……ほう。いつのまに下の名前で呼び合うようになったんだ?」

後ろから礼子さんが尋ねてくる。
多分、表情はニヤついているんだろうな。
見なくてもわかる。

「あー、えっと、日曜日に…こう、なりました」

振り返って礼子さんの顔を見る。
ほら、やっぱりニヤついている。

「私からお願いしたんですよ。“遠也さん”って呼びたいって」

「ほう…。なら、私もそう呼ぶとするかな」

「え」

「遠也さん」

礼子さんがにこりと笑って俺の名前を呼ぶ。
…ほう。
これはこれで…。

「あははは。おい上崎、なに顔を真っ赤にしてるんだ?」

驚いて自分の顔に手をやる。

「ククク、本当に面白い奴だなお前は。コーヒー入れてきてやるからフレンと待ってろ」

椅子から立ち上がって、店の奥へと礼子さんが消えていく。
しばしの間、店内は俺とフレンの二人きりになった。

「今日は、お客さん来た?」

椅子に座りながらフレンにそう尋ねる。

「いえ、今日は遠也さんが最初のお客さんですよ」

向かい側の椅子に座りながらフレンはそう言う。


ここまで書かれていました。
以下の資料は当時の絵師様に描いていただいたものです。
勝手に後悔して怒られたらあとで謝ろうと思います。半蔵さんごめんなさい。

フレン
礼子
主人公
一樹




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プロフィール

ume

Author:ume
ボカロP、宅録バンドマン。
音雲:https://soundcloud.com/overfote
ニコニコ:http://www.nicovideo.jp/mylist/34968076

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